ビザ対象外なのになぜ彼らは来日できるのか
アジア新興国の出身者には、勉強よりも出稼ぎが目的の留学生が数多く含まれる。留学生となれば、「週28時間以内」のアルバイトが認められる。そこに目をつけ、「留学」を出稼ぎに利用するのだ。
ただし、留学には費用がかかる。留学先となる日本語学校や斡旋業者への手数料などで、軽く100万円以上が必要だ。新興国の庶民には、到底負担できる金額ではない。そもそも出稼ぎ目的の外国人は、母国においても仕事にあぶれた貧しい人たちが多い。そのため留学希望者は費用を借金に頼る。日本で働けば、簡単に返済できると考えてのことである。
こうした経済力のない外国人は本来、留学ビザの発給対象にはならない。留学ビザはアルバイトなしで留学生活を送れる外国人に限って発給されるのが原則なのだ。しかし、このルールを守っていれば留学生は増えず、「30万人計画」も達成できなかった。そこで政府は原則を無視して、留学ビザを発給し続けてきた。
現地の斡旋業者が留学書類を捏造している
そのカラクリはこうだ。新興国出身者は留学ビザ申請時、親の年収や預金残高の証明書の提出が求められる。審査する側の入管当局は、ビザ発給の基準となる金額を明かしていないが、年収と預金がそれぞれ日本円で最低でも200万円以上は必要だ。新興国の庶民にはクリアできるハードルではない。
そこで斡旋業者経由で現地の行政機関や銀行の担当者に賄賂を払い、書類を捏造する。数字はでっち上げでも、正式に発行された「本物」だ。新興国では、賄賂さえ払えばたいていの書類は手に入る。そんなカラクリを日本側も分かって留学ビザを発給する。留学生を増やし、さらには彼らを低賃金・重労働に利用するためである。
書類を捏造して留学ビザを取得し、出稼ぎ目的で、多額の借金を背負い来日する外国人を、筆者は“偽装留学生”と呼んでいる。その割合を特定することは難しいが、決して「一部」の留学生ではない。2012年以降に急増したアジア新興国出身の留学生は、多くが“偽装”とみて間違いない。
書類の捏造というインチキを犯している点において、彼らは「加害者」だ。しかし、より大きな視点で見れば、制度が生んだ「被害者」に他ならない。日本側によって都合よく利用されるからである。
コンビニで働く外国人は一部のエリート留学生
偽装留学生たちは、日本語学校に在籍しながらアルバイトに励む。留学生のアルバイトといえば、コンビニや飲食チェーンなどの店頭で働く外国人をイメージしがちだ。しかし、店頭に立てる留学生は、ある程度の日本語能力を身につけたエリートである。さらに多くの留学生が、私たちが普通に暮らしていれば目につかない場所で働いている。コンビニやスーパーで売られる格安弁当の製造工場や宅配便の仕分け、ホテルの掃除など、いずれも日本人の人手不足が深刻な仕事ばかりだ。そんな現場で留学生たちは夜勤に就くケースが多い。