トランプ政権の焦りが信用喪失を招く

米国の半導体製造は少しずつ陰りが見えてきた。長年にわたってチップセットの設計と製造の両方に君臨しているインテルは2019年、半導体製造(ファンドリー・ビジネス)事業が完全に有名無実なものになった。10ナノメートルのチップは歩留まり率と性能の両面で問題を抱えており、14ナノメートルチップは自社の需要すら満たせない状態となった。鳴り物入りで立ち上げた22FFL(Intel 22 nm 超省エネ)も自社で若干利用される程度で、顧客が全くつかないという悲惨な状況の1年だった(※4)。一方、台湾のTSMCは既に5ナノメートルのチップを量産することができ、完全に米国の半導体製造を抜いてしまった。前述のTSMCを米国内で工場を造らせることからも米政府の焦りが見える。

トランプ政権の新型コロナウイルスへの対応は超大国の顔に自ら泥を塗るようなものだ。感染者も死亡者も世界トップで、それぞれ世界の「3割国」となった。死者数は10万人超え、朝鮮戦争とベトナム戦争での米兵死者数を上回った。5月に発表された失業率は1948年以来の最悪水準である14.7%。4月の消費者物価指数は季節的な要因を除いて、0.8%低下と、1957年にCPIを導入して以来の月間最大の下落だ。トランプ政権唯一の成果とされた経済も大きく色あせてしまった。秋の大統領選が迫っており、この危機を誰かに転嫁しないと落選する確率が高いとトランプ大統領が気付き、国民の不満の矛先を中国に向かわせた。

トリムタブス・アセット・マネジメントのボブ・シア最高経営責任者は「大統領選に向けて中国がサンドバッグとして利用されているようだ」とし、「ホワイトハウスはすでに効力が薄まりつつある第1段階の通商合意を利用するより、中国をたたく方がより効果的だと決意している」と述べた(※5)

ファーウェイはこの中国たたきの攻勢で願ってもない絶好な相手になる。しかし、トランプ政権のファーウェイ潰しは自由競争の原則に違反し、自分に都合が良ければ、既存のルールをいかにも簡単に変えてしまう。時々同盟国でさえも道連れにする。

ICCイギリス事務総長、クリス・サウスワースは、5月18日に、米国の政策立案者によって発表された輸出管理規則変更がグローバルなバリューチェーンを脅かすと、「国外の法域の企業に国内ルールを適用することで、他国を犠牲にして自国の経済を保護することだ」と批判した。「それは、町の市長がパンを焼くオーブンのドアハンドルを作り、外国の土地でパン職人が作ったパンを誰が買うことができるかを制御すると同じだ」と揶揄やゆした(※6)

また、イギリスの国際関係アナリスト、トム・フォーディは、5月17日に、「今週のワシントンのHuaweiに対する新しい規制は、驚くべきことではなく、トランプ政権によって長い間議論されてきたが、内部の不一致により、その実施は数カ月遅れた」。そして、「自由市場の美徳を説教しているにも関わらず、ワシントンは、好まない成功した企業を破壊するために、非常に積極的で不誠実な国家主導のキャンペーンを進めてきた」(※7)

国際協力体制をささえる土台は「信用」だ。トランプ政権はファーウェイを封じ込めるため、最低限必要な節度および基本的なモラルを失ってしまった。信用を犠牲にするようなMake America great againのやり方は、最終的にアメリカ自身にとって不利益になるだろう。

(※4)PCテクノロジートレンド 2020 - プロセス編
(※5)米株反落、米中間の緊張の高まり受け売り優勢
(※6)ICC United Kingdom
(※7)Huawei's race to overcome American aggression

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