スマホ事業に打撃だが、通信機器事業で生き残る

今回の制裁で打撃をうけたのは、ファーウェイのスマホビジネスだ。今年の新機種で5ナノメートルのチップを使用する計画だったが、現時点において全世界を見回しても、TSMCしか製造できない。筆者はトランプ政権は今度こそ、ファーウェイを屈服させるようとする、思い入れがあったのではないかと推測している。

ファーウェイのスマホビジネスがかなり低迷することは免れないと思う。しかし、ファーウェイのコアコンピテンシーは、5Gをはじめとする通信機器だ。通信機器に対しても、米国が手を緩めずに引き続き打撃を加えようとしているが、成功しないだろう。

過去20年間、通信業界での最大の話題はファーウェイの予期せぬ追い上げだった。ファーウェイは通信機器のコストパフォーマンスを画期的に向上させることによって、通信業界の伝統的なパターンを完全にくつがえした。

その中でSingleRAM(Single Radio Access Network)技術はアーキテクチャのイノベーションとして業界から認められている。日本ではあまり報道されていないが、SingleRAM技術が発明するまでに2G、3G、4G、それぞれの基地局を立てなければならなかった。初期投資はもちろん、後のメンテナンスも結構なお金がかかる。

SingleRAM技術を使うと、2G、3G、4G、5Gを1つのボックスに統合できる。そして従来の基地局より逆にサイズが小さくなり、電波の発射塔もいらなく、ビルの上、地下鉄の駅等に据え付けることができる。通信キャリアのコストを大幅にさげることができた。2018年にファーウェイはSingleRAM 5G基地局がリリースした。一つのネットワークには5Gおよび5G以下の世代の通信をサポートするだけではなく、人工知能を活用した動的最適化の機能も加えた。5Gについては、ファーウェイが世界をリードする技術力を持つことは、多く報道されており、そのこと自体が5Gについてのファーウエイの技術力の高さを証明している。

技術以外に、ファーウェイの強さは次の三つが挙げられる。①ファーウェイは社員持ち株制の会社であるため、従業員が受け身のサラリーマンではなく、皆が企業家のつもりで仕事に取組んでいる。②ファーウェイの創始者任正非氏の哲学は「極限生存」だ。つまり極限状況がいつかかならず来ることを前提にサバイバルできるように備えてきたこと。③ファーウェイの企業戦略は他の企業と共栄することだ。一国での市場シェアを他社の生存を脅かすほどに、絶対高く取らない。業界であまり敵を作らないことだ。以上の3点は定量化できるものではないが、計り知れないパワーになっている。