「韓国の法人税率は、住民税を合わせても24.2%しかありません。一方の日本は40.69%で16%以上も高い。減価償却制度なども異なり、日本に比べると韓国企業は有利な面があります」(藤森氏)

輸出で稼ぐサムスンには、ウォン安もプラス材料といわれる。

「電子部品など、韓国国内に製造拠点を置くデバイス事業にとっては、たしかにウォン安のメリットがあります。しかし、液晶テレビは80%が海外生産で、市場の85%は海外です。すべての事業において、ウォン安のメリットを享受できるというわけではありません」(藤森氏)

サムスンには、もう一つ、注目すべき点がある。それは広告宣伝費の高さだ。

世界の主要な空港では、必ずといっていいほどサムスンの巨大で派手な広告を目にする。空港から市街地へ向かう高速道路沿い、繁華街、スタジアム、さらには鉄道やバスといった公共の乗り物まで、あらゆる場所で「SAMSUNG」の文字が躍っている。近年では、特にヨーロッパや中東で目立つが、アメリカ、アジア、南米諸国での圧倒的な広告量には驚かされる。

「サムスンの広告宣伝費は、売上高の3%といわれています。売上高は10兆円ですから、3000億円も広告宣伝費に注ぎ込まれているわけです。パナソニックは、08年度で900億円です。業績好調時にトヨタが使った広告宣伝費でも1000億円ですから、いかにサムスンがブランドの浸透に力を入れているかがわかります」(大手広告代理店幹部)

ブランドを浸透させることで、トップシェアを奪い、多額の利益を得る。この利益を原資として、さらなる追加投資を行い、市場や生産規模を拡大する。サムスンは、トップ企業が最も効率的な生産を行い、最大の利益を稼ぐ「収穫逓増の法則」を教科書通りに実践している好例といえよう。

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