データ・ドリブン・マーケティングの先進事例
データ・ドリブン・マーケティングは、データを用いて顧客理解を深め、提供する製品やサービスを継続的に向上させるためのマーケティング活動である。生活者がモノ・サービスに対して興味を持ち、購入し、使用を継続し、情報拡散するという一連のカスタマー・ジャーニーの中で、最適な情報を、最適なチャネル、最適なタイミングで利用可能にすることで、顧客生涯価値(LTV)の最大化を図ることが究極の目的である。
LTVの最大化につながるデータ・ドリブン・マーケティングとは、具体的にどのようなものだろうか。
あるエネルギー小売業では、顧客データ、購買データ、接客データなどを分析して、離反につながる特徴を特定している。たとえば、コールセンターに電話する回数が多く、もっとお得な料金プランはないかと聞いてくるような場合は、離反リスクが高まっている。顧客別にどのくらいの確率で離反するかを割り出すのだ。このような離反リスクがあればアラートメッセージが出てくる。そして、その顧客に訴求しやすい方法(メール送信やフォローの電話など)で引き留め策を講じることにより、離反率を低減させる仕組みを導入している。
また、ファッション業界のある企業は機械学習を用いて個人の嗜好、行動特性、購買履歴に基づいて、商品ごとの購入確率や将来のLTVの予測をし、それを基に、その人にどんな商品を提案するかというメッセージ、チャネル、タイミングを最適化し、パーソナライズを実現している。
商品を提案する際にも、個々のニーズに合致した特徴の商品や価格を示すだけでなく、訴求するときにテキスト主体がよいか、画像が多い方がよいか、使うチャネルはアプリかSNSなのか、広告メカニズムはバナー型が良いか、プッシュ型が良いか、タイミングは平日か週末かというように、細部まで分析した上で、適切な打ち手を選択している。
ファッションの場合は、さまざまなタイプの顧客がいる。そのタイプを踏まえて、今の瞬間にどの商品をどれくらいの確率で買いそうか、アルゴリズムを使って予測することで、企業側は限られた資源(予算、店員など)を最も効果の高いところに集中させることができる。
その際に重要なのが、トラッキングする仕組みをつくることだ。特に、社内で取れているデータだけで結果を見ていくやり方には限界がある。欠けている要素をどう補うかという視点も必要になる。たとえば、ある施策を打ったときに、コンバージョンしたかどうかだけでは不十分かもしれない。ソーシャル・リスニング・ツールを使って、どんな反応があり、ブランド好意度にどう影響し、さらに売り上げに影響があったかを分析することで、課題が見つかり、マーケティングの枠組みや方針、打ち手の修正ができるかもしれない。