日本企業は、データを活用したマーケティングの分野でかなり立ち遅れている。その水準はアジア太平洋地域や欧州よりも低い。BCGの森田章氏は「依然として従来型のマス・マーケティングや広告代理店への依存度が大きく、データ・ドリブン・マーケティングの組織能力を内製化しきれていない傾向がある」と警鐘を鳴らす——。

※本稿はボストン コンサルティング グループ編『BCGが読む経営の論点2020』(日本経済新聞出版社)の一部を再編集したものです。

データ報告が表示されたタブレットを持つ女性マネジャーの手元
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市場の成熟化、生活者のニーズの変化、デジタル技術の進歩や、利用可能なデータ量の増大等を背景に、データを活用しながら個々人の状態に合わせて働きかけるデータ・ドリブン・マーケティングの巧拙が、企業の競争力を大きく左右するようになっている。

BCGがグーグルと共同で行ったグローバル調査から、日本の企業が大きく立ち遅れていることや、マーケティング・プロセスの自動化、消費者接点の把握、機能横断的な連携について課題を感じていることが明らかになった。日本企業はデジタル・マーケティングの分野で現状の劣勢を跳ね返し、早急にキャッチアップできないと、新たなパラダイムにおいても競争力を失っていくことになりかねない。

パラダイムシフトが起きる2つの要因

これからの企業競争において、「エコノミー・オブ・スケール(規模の経済)」から「エコノミー・オブ・ラーニング(継続学習能力の経済性)」へのパラダイムシフトが起こっている。

従来のマス・マーケティングは、巨額のマーケティング予算を投じ、規模にものを言わせて価格競争を展開できるプレイヤーが勝つ構造だった。これに対し、データ・ドリブン・マーケティングでは、単純に大規模な予算を持つプレイヤーがビッグデータを取得し、それを武器に優位に立つ、という構造になるとは限らない。単に多くのデータを保有するだけでは不十分であり、マーケティング目的に沿ってどうデータを活用するかという全体像を設計した上で、適切なデータを取得、分析、活用するほうがはるかに重要である。