黒川検事長に7000万円超の退職金を与えるべきではない
それにしても驚かされたのは、「接待賭けマージャン」を報じた5月20日の週刊文春の電子版である。検察庁法改正案の発端となった東京高検の黒川弘務検事長(63)が、緊急事態宣言中の5月1日と5月13日の2回、産経新聞社会部記者や朝日新聞の元検察担当記者らと賭けマージャンをしていたというのだ。場所は産経新聞記者の自宅マンションで、出入りする際の写真まで撮られている。
司法担当記者と検察ナンバー2の東京高検検事長が賭博に興じていたというのは信じがたい。しかも黒川氏は産経新聞社のハイヤーで送迎してもらったという。一連の行為は、間違いなく国家公務員法違反だ。
黒川氏は法務省の聞き取り調査に対し賭けマージャンをしたことを認めており、21日夕方には辞表を提出している。しかし、辞任ではなく、最も重い処分である懲戒免職とすべきだろう。検事長の退職金は7000万円以上となるが、そうした退職金も与えるべきではない。
問題の発端は、1月末の「半年間の勤務延長」という閣議決定
黒川氏は1983年に検事として任官。97年に東京地検特捜部に配属され、自殺した新井将敬衆院議員が関係した証取法違反事件などを手掛けた。98年に法務省に異動し、赤レンガ派と呼ばれるキャリア官僚の道に進んだ。法務省の官房長や事務方トップの事務次官を歴任し、昨年1月、東京高検検事長に就いた。
黒川氏は自民党の政治家だけではなく、野党議員にも人気があり、政治家からの頼みごとには、自ら嫌がらずに進んで対応していた。マスコミ関係者との関係も深い。
今年2月に63歳の定年を迎える予定だったが、直前の1月末に安倍政権が半年間の勤務延長を閣議決定した。これが問題の発端だった。
黒川氏の定年延長は前例のない人事で、官邸に近いとされる黒川氏に検事総長就任の道を開く脱法的行為だと批判された。
批判に対し、安倍首相は国家公務員法の定める延長規定が検察官には「適用されない」とした政府の従来解釈の存在を認めたうえで、安倍内閣として閣議決定の前に法解釈を変更したと述べた。これは勝手な言い訳だ。事実、解釈を変えた具体的経緯は公文書として残されていない。
今回の検察庁法改正案は、解釈変更を後付けで正当化する道具なのだ。分かりやすくいえば、検察組織を意のままに操るため、安倍政権に従う黒川氏を検察トップの検事総長に据える人事を合法的に見せかけようとしたのだ。