いま必要なのは世界標準による検査だ

保安院が浜岡原発をセーフと判じたのは、非常用ディーゼルエンジンを屋根の上に据え付けたから、大津波に襲われても非常用電源は水没しないという理由だった。

しかし、津波対策だけで今回の原発事故が防げたかといえば、そんな甘いものではなかったと私は思う。原発事故を克明に反省すると、私がちょっと思い浮かべただけでも200ぐらいの検証項目が出てくる。

たとえば非常用ディーゼルエンジンが水没しなかったとして、地震で外部電源が落ちた場合に非常用電源がきちんと立ち上がったのかといえば、これが相当に怪しい。本震では問題なかったが、マグニチュード7レベルの大きな余震があったときに、女川原発でも東通原発でも四基のディーゼルエンジンのうち一基しか立ち上がらなかった。首の皮一枚だったのである。

非常用電源が無事立ち上がったとしても、福島第一原発では水素爆発で配線や配管が寸断されているし、モーターやポンプの多くも動かなくなっている。電源が確保できても、肝心の冷却機能を維持するポンプやモーターが作動したかどうかも現時点では不明だ。

福島第一原発の冷却水取り入れポンプは海岸の崖下にある。そこから復水器に海水を汲み上げているのだが、この取り入れポンプのうち左側の幾つかがギロチン破断しているのが写真で見て取れる。仮に電源が立ち上がっても、海辺から取る復水器の冷却系は機能しなかったと思われる。また、ディーゼル燃料のタンクも津波で流されていたから、非常用電源が立ち上がったとしてもすぐに燃料切れを起こして電源喪失していたはずだ。