タワマンで「雨漏り」が起こる理由
タワマンといえば、都心居住の代名詞。素晴らしい眺望、都心部へのアクセスの良さ、そして充実の共用施設など一般庶民には「憧れ」のマンションといわれてきた。
しかし、今ではその希少性が薄れるだけでなく、タワマン独特の問題があちらこちらで叫ばれ始めている。
まだあまり話題になっていないが、築15年から20年を迎える物件で目立ち始めたのが、雨漏りの問題である。タワマンの多くが、首都圏でも湾岸エリアに立地している。工場や倉庫の跡地といった広い敷地を活用したものが多いからだ。海沿いは潮風が強い。そして高層建物であるために強風を受けて常に微小な「揺れ」が生じている。また日本は地震の多い国なので、建物はしばしば強い揺れにも襲われている。
この「潮と風と揺れ」は意外に曲者だ。コンクリートの継ぎ目や窓枠の目地には元来コーキング材などが充塡されているが、経年とともに劣化する。とりわけ湾岸エリアは、その度合いが通常のマンションなどと比べものにならないほど激しいのだ。強風によって吹きつけられる潮はコーキング剤の劣化を早め、小さな揺れの連続は亀裂を促進させるからだ。
タワマンは、高層であるために修繕にあたって足場を組むことすらできない。したがって雨漏りが始まっても、必要な修繕が施せずに放置状態が続くことになる。タワマンで窓枠等から浸水する被害に悩まされている住戸が多いのは、こうした要因によるものと言われている。
2000年以降に建設されたマンションの多くが、東京五輪以降は築20年を超えて大規模修繕の時期を迎える。外壁の修繕には足場が組めないために、屋上からゴンドラを吊り下げての工事になるが、湾岸部で高層建物ともなれば、上空は常に風が強く作業日は限られ、工期は通常マンションの数倍かかるといわれる。
非常用発電装置の交換でかかる多大な負担
多くのタワマンでは大地震等での停電に備え、非常用発電装置が備えられている。いざというとき安心の設備であるが、これも経年劣化が激しい。築15年から20年程度で交換するにあたっては、1基数千万円から1億円の負担となる。
また、メンテナンスをしっかりと施さないと、その「いざ」というときに役に立たない。あるビル会社が東日本大震災の後、運営管理しているビルの非常用発電装置を実際に動かしてみたところ、多くの設備が規定通りの時間作動することがなかったという。それだけメンテナンスが難しい設備であるということだ。
タワマンに装備されているエレベーターは、超高速のもので、高性能であるぶん、更新する場合には大変な金額となる。普通のマンションのエレベーターがプリウスなら、高層用のものはポルシェのような差があるのだ。
今後、これらの問題をすべて負っていくのは、分譲したデベロッパーではなく、一人ひとりの所有者なのである。