文科省は2020年度の履修を2020年度内に行うという考え
1)文科省は長期戦に備えることを覚悟した
この通知の意図するもの。それは、文科省は休校措置の4、5月は学校が指示した各教科の分量を家庭が実践することで、その分のカリキュラムは修了とし、2020年度の履修を2020年度内に行うという考えを持っていると筆者は考える。
今後、緊急事態宣言が解除された後、「学校を通常通り再開する(カリキュラムを最初から始めて、早回しで最後まで完了させる)」という想定でいるなら、このような通知を文科省が出すとは考えにくい。4月21日というタイミングでこの通達を出したということは、今後、「新型コロナによる休校が長期化する」または「年間を通じて断続的休校が発生すること」を前提に出したものと思われる。
4月に富山の小学校で学校再開した際、児童と教員が感染したと報道があり、今後の学校再開に向けてのハードルが一気に上がったと思われる。それにより、家庭における学習モデルを形成することで、何とか今年度の履修を今年度内に終わらせたい、という気持ちを強めたのではないか。
ところが、4月、筆者が主宰するママサークルにおいて約200人の保護者を対象に「休校中どのような問題で悩んでいるか」という調査を行った結果、次のような項目があがった(複数回答)。
1)勉強方法や使用教材に関する内容 25%
2)子どものやる気に関する内容 14%
3)スケジュールに関する内容 13%
4)スマホ・ゲームに関する内容 13%
5)親が勤務で忙しく面倒みられないという関連の内容 12%
6)コロナに起因する子育てへの焦り・不安 12%
7)その他(学習環境、兄弟姉妹喧嘩など)11%
特に目立ったのが「どうすれば子供は勉強するのか」「教材をどう活用すればいいのか」という保護者の声だった。
教師が進めるべき授業進行を家庭に丸投げするつもりか
今回の文科省の通知により、各学校が家庭におけるスケジュールを具体的に明示し、それにしたがって家庭は勉強を進めるということになっているが、実際はスムーズに実践できている家庭は少数派だ。
なぜなら、学校から示されるのは、日々勉強する教科書やドリルのページの範囲だけで、全教科具体的に何をどのようにどれくらいの時間をかけて行ったら良いのかという点まで細かく明記されていないことが多いからだ。だから、保護者は何をどうしたらいいかわからない。筆者にはそうした不満の声がたくさん届いている。
結局のところ、文科省は本来、教師が進めるべき授業進行を家庭に丸投げするつもりなのか、といった懸念と不安が保護者には渦巻いている。