コロナが「学校」「学び方」「親の支え方」を変える
動画や双方向型授業の場合、「端末」の問題も出てくる。
国は2020年度の補正予算に「GIGAスクール構想」を前倒しで盛り込んだ。これは全国の小中学生に1人1台のパソコンを配備させる内容だ。
この構想そのものはいいのだが、それですべての問題が解決するわけではない。例えば、学校や家庭の通信インフラ未整備問題はどうするのか、また、子供にPCのキーボード打ち方や使い方を教えるための時間をどう確保するのか。
また、横浜市など一部の自治体で、授業内容を動画で配信をしているが、これにもハードルがある。動画のクオリティーの問題だ。子供たちを引きつける中身になっていないと、やる気が出ないという子は多いだろう。現在は非常事態で教育現場も大混乱している。その中で、高品質の動画や、効果的、効率的仕組みを求めることは酷だろう。
このようにICT教育はすぐ始めようにも一朝一夕に始められないことがわかるが、ひとつ言えるのは、これまで固執してきたアナログ教育が、新型コロナにより強制的にデジタル教育へと転換せざるを得なくなったということである。
今後、コロナが終息後しても、この流れは変わることはなく、オンラインとオフラインのハイブリッド型の授業展開になると思われるため、今回の取り組みはその布石となるはずだ。
以上の3つポイントから、今後、「学校の授業の進め方」「子供の学び方」「保護者の支え方」など教育の在り方は大きく変わることが予想される。その中で、自治体による教育環境格差や、子供たちの間の成績格差などが、これまで以上に大きくなるおそれもある。
来春の大学入試は、「高2までの範囲が中心」になるのか
さらに、影響は2020年度の教育課程だけにとどまらず、来年春の受験についても及ぶことは必至である。大学受験、高校受験、中学受験などを、いつ・どのように実施するのか、どんな内容の出題をすればいいのか……。
現在は、まだ2019年度の受験が終わってまだ数カ月たった時期であるため、議論の俎上にあがっていないが、9月以降にはこの問題が生じてくるだろう。
5月11日に日本教育学会は「来春の大学共通テストは、高校2年生までの範囲に重点を置くという案も議論している」と発表した。仮にそのような形としても、来春の入試は大波乱含みとなることは必至である(※)。
※編集部註:文部科学省は5月13日、来春の高校入試では出題範囲などについて、配慮するよう求める通知を全国の都道府県教育委員会に出した。
大学入試が高2までの範囲が中心なら、高校入試は中2まで範囲、中学入試は小5までの範囲となるのかどうか。簡単に決められる話ではない。
これらの課題をただちに解決する方法はない。だが、少なくとも文科省など意思決定をする立場にある者が、リーダーシップを持って迅速に決断することが重要である。遅ければ遅いほど、そのしわ寄せが家庭や子供にくることだけは確かである。