たとえば、安倍晋三首相の年収は月額240万円で期末手当なども入れると約4000万円だ。内閣総理大臣は2012年の野田内閣時代から給与も期末手当も30%返納しているため、実際の安倍首相の受け取り年収は約2800万円ということになる。一方、今回の歳費法改正に伴い、国会議員は約2200万円のうち月額20%・年間約300万円を引いた報酬を受け取る。連日のように激務をこなす安倍首相と、たとえば議場で呆れた質問をする蓮舫氏などの国会議員の給与差が、今回の返納後は1000万円程度しかない。政府全体の運営を担う責任者の給与と重箱の隅をつつくスキャンダルを議論する人に与えられる報酬の差異として些か疑問がある。

今回のコロナウイルス対策で目立った活躍をしている各都道府県知事の所得は幾らだろうか。毎日新聞が報じた都道府県知事の2018年の所得報告書(給与以外も含む)によると、対象となった42都道府県の給与所得の平均は1876万円だった。最高額は神奈川県の黒岩祐治知事の2491万円で、千葉県、宮城県、群馬県、埼玉県などがトップ5だ。

最も所得が低い知事は小池百合子知事だった

最も所得が低かったのは東京都の小池百合子知事である。東京都の小池知事の給与は1253万円しかなかった。これは約2900万円の東京都知事の給与を小池都知事が自ら減額してきたことによる。これは知事給与の受取額を50%以上減らした国内では驚異的な事例と言えるかもしれない。今回、知事の所得額を改めて調べた際に少々驚きを覚える数字であった。

ちなみに、海外では地方議員給与は無報酬かそれに近いものも多く、日本の中堅都市以上の地方議員のように、地方議員を専業として暮らすことは必ずしも一般的な姿ではない。地方議員は地域のことを扱う立場であり、市井の人々と近い感覚でまちづくりにボランタリーで寄与するイメージなのかもしれない。

もちろん、退職金、年金、支給経費なども別途考慮する必要があるが、このような給与削減額の数字を並べてみると、現状で国民が味わっている経済的な苦しみとは比較にならないものの、日本国内の各政治家が国民に対して自らの政治姿勢を表す指標としては面白い物差しだと思う。

トランプ大統領のように日本も大金持ちや世襲議員が自らの給与を1円として職務に邁進する姿を見せた場合、その政治家の支持率が上昇することは間違いないだろう。それがたとえポピュリズムと呼ばれるものであったとしても、国民に自粛要請という負担を求める現状において正しい政治家の姿勢ではなかろうか。

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