報酬に対する日米政治家の大きな意識の違い

米国のドナルド・トランプ大統領は「1ドルしか受け取らない」と選挙期間中に公言し、実際にその給与の大半を寄付に充てている。同大統領は様々な批判を受けてはいるものの、米国大統領の年収・約4500万円を丸ごと溝に捨てて大統領としての職務に邁進まいしんしており、本来受け取るべき給与の寄付先は定期的に公表されている。このほかに米国での過去の政治家で、年俸1ドルで働いた人々として、ニューヨーク市長時代のマイケル・ブルームバーグ、カリフォルニア州知事時代のアーノルド・シュワルツェネッガーなど多数の事例が存在している。これらの人々の存在は公のために働くという米国特有のボランタリー精神を体現したものと言えるだろう。

一方、日本では4月27日に可決した国会議員の歳費を1年間20%削減する改正歳費法によって、月額歳費129万4000円の20%、つまり約25万円程度を毎月減らすことが決まった。ボーナスである期末手当約320万円はそのままであり何ともずるい対応ぶりだ。先ほどの議員報酬返納の功罪から考えると、このような「やった感」だけを出す無駄なパフォーマンスが最も害悪と言えるだろう。

議員報酬20%返納で全会派が一致してお茶を濁す日本

まず、国民と共に苦難の道を歩むならば、「歳費は数カ月間ゼロ、秘書給与の一部は雇用調整助成金と同額を支払う」「政党助成金や立法事務費等の支給停止」「期末手当は当然に廃止」「持続化給付金200万円受領」「事務所運営費用は政府系金融機関から貸付」が当然だろう。これこそが政府が自粛を要請している民間企業の現状だからだ。議員事務所というものは、中小零細企業と変わらない規模であるため、これで運営できるなら自ら実践してやってみたらいいと思う。

筆者はいずれかの政党がこの程度のことは自主的に実施するかと密かに期待していたが、議員報酬20%返納で全会派が一致してお茶を濁したことは残念でならない。実際、議員報酬の20%返納のみで、期末手当まで貰う人々に心から共感する国民などほとんど存在しないだろう。

ところで、政治家に支払われる報酬について、日本の基準は根本的に疑問に思うところもある。コロナウイルスによる社会危機、緊急事態宣言による経済危機が起きている現在でも、すべての国会議員の仕事量が同じであるわけではない。まして、政権入りしているか否かによっても職務・責任も大きく異なることになる。ところが、日本の政治家に対する報酬システムは連日のように働く内閣総理大臣とその他の国会議員の間に大きな差が存在しない状況になっている。