エレベーター床に仕切りも

4月30日までを期限とする非常事態宣言の期間を、政府は28日に1カ月間、延長すると発表した。ただ、新規感染者は右肩下がりに減ってきている。商業施設や娯楽施設などの営業再開も政府内で検討されている。

新規感染者が減少したのは、政府の命令が効いただけではない。国民の意識も高かった。在宅勤務や不要不急の外出自粛は、率先して行われた。

オフィスビルやマンションのエレベーターでは、ヒト同士が互いに距離を保つため床をテープで仕切り、つま先が壁側に向いた足跡のシールを貼って3密を防ぐところが増えた。呼び寄せたエレベーターが来ても、「足跡」が余ってなければ遠慮する。

ソーシャル・ディスタンスを守るため、床をテープで仕切ったエレベーター。

「いい国やね、タイは」

タイ人たちの多くが、在宅勤務やソーシャル・ディスタンスの徹底など感染対策に団結して取り組んだ。しゃかりき432”の清水によれば、「外国人も、タイ人が頑張っているから、政府の言うことを聞こうとなった」。それでいて、声高に自粛を押し付けない仏教国の温かさもある。

バンコク中心部アソークのしゃかりき432”の店舗は18日、空き巣が侵入し、ノートパソコンや宅配アプリ用発注機器など約30万円相当が盗まれた。清水にとっては、弱り目に祟り目だったが、ニュースをみた宅配アプリ会社がすぐに代替の発注機器を用意してくれた。「やっぱいい国やね、タイは」。清水はそう実感する。

串焼き屋のヒナタでも、常連客が注文を続けてくれたことで、店内飲食なしの営業もなんとか軌道に乗ってきた。「ここまで来たら中途半端に開業を認めるより、終息させ切ってほしい。感染が再拡大して、また閉店を命じられるよりはいい」。店主の長谷川は今、そう願う。日焼けした両腕に「唐揚げ弁当」や「オム焼きそば」などを下げ、ニケツで今日も駆けずり回る。

新型コロナの影響で、タイでは人口の約1割に当たる700万人が失業したとの推計もある。また、現段階で感染拡大の防止に成功したと言うのも時期尚早だ。ただ、「微笑みの国」の政府と国民が取り組んでいる3密対策には、日本が学ぶべき点も多いはずだ。

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