神永は吉祥寺にある3LDKのマンションに、同じくCAに勤める妻と2匹のチワワとともに暮らしている。神永も妻も読書家であり、神永はビジネス書の他に小説やノンフィクションも読む。妻は“このミス系”(このミステリーがすごい!)が好きで、いまは米澤穂信にハマっている。

撮影=遠藤素子

結婚して10年。毎年1回はハワイ旅行をすると決めている。なかなか2人のスケジュールが合わないが、ここ5年はなんとか行けている。

「ハワイに行っても結局飲んでますね。プールサイドやホテルの部屋で飲みながら、本を読みます。やってることは吉祥寺にいるときと変わりません(笑)」

「いまは起業したいとはまったく思いません」

神永はCAに入社した当時、いずれは起業したいという夢を抱いていたはずだ。その夢はどうなったのだろうか?

「いまは起業したいとはまったく思いません。挫折したわけではなくて、成長産業に身を置いて、会社を伸ばしていく仕事をやらせてもらってきて、いまの仕事が面白くなってしまったんです。この先も、どこまで会社を大きくできるかチャレンジしていきたいですね。

独立して個人でやる人もいるけれど、僕は会社のアセットを使ってひとりではできない大きな仕事をやって、会社の成長に影響を与えられる人間でい続けたいんです」

「自己実現」という言葉に囚われていた筆者の世代には、「ひとりでやっている」人間に一目置く空気があった。しかし、一回り以上年下の神永の言葉からは、そうした指向は感じられない。神永が人生において最も価値を置いているものとは、いったい何だろうか。

「対自分ではなく、対組織ということを常に考えますね。自分がどうなりたいかではなく、組織がもっとうまく回る仕組みや、成果の出る仕組みを作れないかと。大切なのは金とか社内のポジションではなくて、能力です。対組織の中で自分がどんなアウトプットを出せる能力を持っているかをいつも考えています」

人生最高の思い出は?

「結婚式の最後に新郎挨拶をしたとき、スピーチをしながら、自分は本当に周囲の人に恵まれていると思いました。両親にも妻にも友人にも、会社の同僚にもクライアントにも。2匹のチワワさえ、奇跡的な偶然が重なって一緒に暮らしている。そう思ったら、泣くつもりはなかったんですが、涙があふれてしまいました」

自身の能力を客観的に測定しつつ、能力の向上を怠らない。オレがオレがではなく、組織が最高のパフォーマンスを上げるためにどのような貢献ができるかを常に意識する。貢献ができなくなったら、肩書に恋々とすることなく静かに組織を去っていく……。