繰り返される「バッタ防除」と「大発生」の謎

バッタの防除は、主に化学農薬に頼っている。だが、群生相の成虫が大群となって飛来するようになれば防除できなくなる。バッタのアウトブレークを防ぐには、バッタの集合化の兆候をモニタリングするしかない。

群生相化しそうなバッタの集団を見つけて、幼虫の段階で農薬を散布するのが有効だ。そのために、ローマに本部を置くFAO(国際連合食糧農業機関)には、バッタ対策チームが設置されている。彼らは人工衛星によるGIS(地理情報システム)を使ってバッタの発生をモニタリングし、アフリカや中東アジアの国々と連携して初期防除に努めている。

写真=iStock.com/pawopa3336
「蝗害」の終わりはまだ見えない (※写真はイメージです)

予算システムという視点で考えると、バッタの防除対策には課題がある。それは大発生が不規則なタイミングで繰り返し生じる点に集約される。いざ大発生が始まると、各国や国際機関は莫大な予算を投入し、防除や研究が進む。しかし発生が終わると、予算は削減されてしまう。この繰り返しなのだと、バッタ研究者たちは指摘する。

感染症専門家不足が新型コロナを悪化させたのと構図は同じ

これはバッタに限ったことではない。

筆者はわが国の南西諸島に侵入する害虫問題に携わっているが、侵入害虫の発生がない年でも警戒の手を緩めると侵入警戒システムの維持が困難になる。火事のないときでも消防署が必要な理由と同じである。

新型コロナウイルスの出現で暮らしを一変させられた僕たちは、この仕組みを十分に思い知ったはずだ。感染症専門の病床と専門医の確保が、どれほど世界中で脆弱であったことか。

経済の維持は重要だが、人類の命を守る社会保障とのバランスをとることが持続的な社会システムにとってより大切である。