厚労省がデイサービス職員による利用者宅の訪問ケアを可能にしたワケ

このマスク以上に介護業界の人たちを驚かせた厚労省の素早い動きがもうひとつあります。それは「通所介護、つまりデイサービスの職員が、利用者宅に訪問してケアをしてもいい」という制度変更を厚労省が決めたことです。

これには介護の現場や業界の事情を説明する必要があるでしょう。

「在宅介護」は本来、要介護者が自宅を訪れるホームヘルパーや訪問看護師などの介護サービス事業者のサポートを受けてケアを受けるものです。

一方、「デイサービス」は、在宅で介護を受けている高齢者などの要介護者が、日中、設備の整った施設でケアを受けるものです。施設のスタッフが要介護者を朝、自宅まで迎えに来てくれます。施設ではお昼ごはんも出るし希望すれば入浴もできる。さまざまなレクリエーションをしながら一日を過ごし、夕方にはまた自宅に送り届けてくれます。家族はその間、安心して仕事ができるというわけです。

休業要請出ないのに自主休業の介護事業者続出で「介護崩壊」の危機

しかし、デイサービスの施設は、新型コロナウイルス感染において避けなければならない3密(密閉、密集、密接)の場所です。実際、施設内で集団感染した事例が発生しています。ただ、悪条件はそろっていても必要とする人がいるため、デイサービスの施設に休業要請を出している自治体はありませんが(3月に名古屋市が2週間の休業要請を出した例はある)、感染を恐れて自主休業している事業者はあります。

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NHKは4月15日、緊急事態宣言が出された7都府県のデイサービス事業者を中心に249社が自主休業していることがわかったと報じました。主な休業の理由は、「地域での感染の発生」「感染の予防」「マスクや消毒液など衛生用品の不足」「事業所の人手不足」とのことです。いわば「介護崩壊」の危機が迫っているのです。