「ご存じでないと思いますが、PowerAppsという製品がありまして……その技術営業にご興味はないでしょうか?」

知っています! すぐに面接を受けさせてください! 即答だった。

「いつかは働きたい会社でした。もしロンドン大学に行けていたら、研修先はゴールドマン・サックスやグーグル、マイクロソフトだったんだよなと、悔しい気持ちを思い出すことも多かったので」

米国、シアトル郊外レドモンドにあるマイクロソフト本社の製品開発チーム勤務に。

吉田さんは履歴書にPowerAppsへの情熱をしたため、シンガポールやアメリカ、日本など、合計4つの面談を受ける。当然コミュニケーションの多くは英語だ。マイクロソフトは学歴を考慮することもなく、実績を見る。吉田さんのためにあるかのような採用だった。収入も圧倒的に跳ね上がる。

そして18年の1月、27歳で「GlobalBlack Belt」という、PowerAppsに特化した技術営業として、米国マイクロソフトの本社に入社する。入社時はまだ、PowerAppsの知名度は高くなかった。

諦めるということは基本的にしない

「セミナーを開催したり、相手方に出向いたり、とにかく知ってもらうことから始めました」。1年で開いたイベントは29回、名刺を交換した企業数は350社。1年で売り上げは10倍以上に拡大し、世界の利用者数は250万人を超えた。

吉田さんのこれまでの熱意を支えたのは、PowerAppsへの思い入れの深さだ。プログラミングの知識がなくても、どんな人でもアプリを作れるPowerAppsの特異性は、学歴や環境に苦しんだ吉田さんにはひときわ魅力的だった。

「例えばロンドン空港でボディチェックをやっていたセキュリティ担当の人が、PowerAppsを使って、空港の雑務を効率化するアプリを作り、彼はITスペシャリストになった。その人は中卒でした。そういうキャリアの人がこれから増えていきます」

最後に、29歳になる吉田さんに自分の強みはどこか、聞いてみた。

「継続力です。とにかく情熱を持ってやり続けること。諦めるということは基本的にしないですね」

いま、世界中で大問題になっているコロナウイルス。吉田さんも、20年5月に予定されていた渡米がウイルス終息まで延期になった。

「これから世界のシステムや働き方に変化が求められる。努力すれば活躍の舞台は広がっていて、社会にインパクトを残せる。それは僕自身でも証明できたと思うので、これからもっと大きなインパクトを残したいですね」

吉田大貴(よしだ・たいき)
マイクロソフトコーポレーション カスタマーアドバイザリーチーム シニアプログラムマネージャー
1990年、大阪府豊中市生まれ。イギリス・キングスカレッジトーントンスクール卒業。帰国後マクドナルドでアルバイトを開始。その後、地元工業団地で派遣社員として勤務した後、システム会社やEYアドバイザリー・アンド・コンサルティングなどを経て、2018年1月にマイクロソフトへ入社。20年からは米国本社ベースで勤務予定。
(撮影=今村拓馬)
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