治療後の再犯率は受けない場合の10分の1に

第三は、やめようとしたときの対処である。二人とも、「意志の力」で、我慢を重ねることで、性的行動をやめようとしていた。これも、治療につながる前のアルコール依存症や薬物依存症患者の対処法とまったく同じである。

原田隆之『痴漢外来 性犯罪と闘う科学』(筑摩書房)

強い意志を持つこと、我慢することは、たしかに重要である。反省ももちろん重要である。しかし、それで収まるならば苦労はない。むしろ、それで収まるくらいならば、そもそも依存症ではない。先に述べたように、圧倒的な衝動に突き動かされて、理性や意志の力がなぎ倒されてしまうのが、依存症の本質であるからだ。

マコトさんが述べていたように、脳が乗っ取られたような状態になり、意志の力では太刀打ちできなくなる。意志の力に訴えかけ、反省を促す「処罰」だけでは、この問題を解決できないのはこのためである。

第四に、治療につながることで、彼らは問題行動をやめ続けることができているということである。そして、本来の自分を取り戻し、新しい生き方を手に入れつつある。このように、治療には明らかな効果がある。『痴漢外来 性犯罪と闘う科学』の第四章で詳しくデータを紹介しているが、痴漢の再犯率は30%程度とされているところ、痴漢外来で治療を受けた人々の再犯率は、3%弱である。

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