「ほかの難関大学での口頭試問では、時事に関する問題を出題されたりします。日頃から新聞などに目を通し、自分なりの考え方をまとめ、表現するといった能力がなければ、AO入試にはパスできません」と石渡さんはいう。

早慶クラスのAOは一般入試でも合格

では、現役の大学生はAO入試組をどう見ているのだろう。早稲田大学は現在、政治経済学部、国際教養学部などがAO入試を実施している。同大学系属高校から同大学政経学部政治学科に進学し、20年3月に同大学を卒業した後、大手総合商社に就職する前田弘美さん(仮名)は、AO入試で入った友人について次のように話す。

「一般入試で入った学生よりも、むしろ優秀でした。まわりの学生より問題意識が高く、東南アジアでのボランティアに参加したり、海外でのインターンを経験したりするなど、行動力もありました。自分の意見を持ち、いつも議論の中心になっていましたね。帰国子女が多くて、彼女もその1人で語学が堪能でした」

同大学基幹理工学部の北原信之さん(仮名)は都内の有名私立進学校の出身で、「同じ高校からAO・推薦入試で慶大などに進学した友人は総じて優秀でしたね」と振り返ったうえで、「高校の後輩にはAO入試ではありませんが、推薦入試で東大医学部に合格した子もいました。脳科学オリンピックの日本代表に選ばれるなど、高校時代からズバ抜けて優秀なので、校内でも有名人でした。もし一般入試で東大医学部を受験しても、受かったでしょう」というエピソードを紹介してくれた。

一方で、AO入試の元祖である慶應義塾大学も現在、SFCをはじめ法学部などがAO入試を実施している。同大学法学部法律学科の松村誠さん(仮名)は、慶應義塾高校出身の内部進学者で、体育会系クラブに所属している。そのため、高校時代のスポーツの実績が認められてSFCにAO入試で入った体育会の友人が多いという。

「彼らはメンタルが強くて、リーダーシップも取れるんですが、それだけじゃないんです。コミュニケーション能力に長けていて、女の子を口説くのも上手。ゼミでのプレゼンにも強いのでしょうね。それにスポーツ実績でのAOといっても、出身高校は地元での有名校で、いわゆる“地頭”もいい。そして独立心が旺盛な子が多く、ベンチャーで起業し、成功したAO入試組の先輩が何人もいますよ」

そう語る松村さんが学ぶ法学部の学生にも、AO入試で入った友人がいる。