一方で、高学歴の女性は、自分の学歴を不利だと考えている側面もある。調査でも、女性が不利と回答している比率は、男性に比べると高い(図5)。冒頭で紹介した早稲田卒の佐々木さんと柳さんは、婚活の際、大学名を自らアピールしないという共通点があった。その理由は、「早稲田卒を誇っている女性に見られたくない」(佐々木さん)、「『すごいですね』と言われてそれに謙遜するやりとりが面倒」(柳さん)であるから。婚活市場で高学歴女性のニーズが高まっていても、誰しもがそれを感じているわけではないようだ。
自分より低学歴だと建設的な話が難しい
では、高学歴の男性であれば婚活市場で圧倒的な勝ち組になれるかといえば、そうともかぎらない。慶應卒の藤村亮さん(仮名・33歳)は、通信業の仕事に関わり年収700万円。自分の学歴は婚活においてプラスになっていることを自覚している。
「自分はべらぼうに年収が高いわけでもなく、身長も若干低い。それなのに、女性側から『会いたい』という申し込みが来る理由は、大学のネームバリュー以外に考えにくいので」
藤村さんは2年前に婚活を開始し、これまで30回のお見合いを経験した。何回か「交際したい」という申し出を受けたが、断って今に至るという。
「当初は気にしなかった相手の学歴を、婚活中に気にするようになったんですよね。僕は乗馬と絵画鑑賞が趣味で、旺盛な知的好奇心についてこられる女性を探すと、どうしても高学歴になってしまうことに気づきました。高卒の歯科衛生士とお見合いした際、『素敵な趣味ですね』と言われたけれど話が続かず、関心範囲の狭さを感じましたし……。自分より学歴の低い方とは建設的な話ができない気がします」
高学歴ゆえにハードルが上がり、それが藤村さんの結婚を妨げているようだった。「学歴は気にしない」と考えてはいても、その後に「ただ……」という条件の補足はついて回る。そして、学歴に付帯する「収入」や「仕事」に意識は向かい、相手も同じように自分を見ている。これからも学歴は、婚活市場で静かに、そして強い影響力を及ぼしていくのだろう。