ドイツでは身だしなみ、学校外のことはノータッチ

日本の雑誌で読んだ衝撃的な校則についてドイツ人の同級生に話そうとしても、ドイツの学校には校則そのものがないため、上手く説明できませんでした。「日本の学校には細かいルールがあって……」と言いかけると、なんだか遅れた国の話を聞いているかのような目で見られ複雑な心境になったことを覚えています。

もしかしたらドイツの学校にも、規則が書かれた紙というか文書は校長室などに保管されているのかもしれません。

しかし、なんせ生徒手帳なるものがないため、私の知る限り生徒がそれを確認したことはありませんでした。校長先生などにお願いすれば、学校のルールが書かれた紙を見せてもらえるのかもしれませんが、大きな話になってきそうです。

結局、筆者がドイツでギムナジウムに通っていた9年間、「これが学校のルールです」と紙を見せられたことはありませんし、口頭で身だしなみ等に関するルールを告げられたこともありません。当然ながら、「学校の規則についてもっと知ろう」とワザワザ職員室に確認しに行く生徒も皆無でした。

もちろん無断の欠席が続いたり、宿題をやらなかったりといったことは記録に残るし、それに対する対応は厳しいのですが、生徒の身だしなみだとか学校の外での生活態度についてドイツの学校は基本的にノータッチなのです。

日本は「家庭」と「学校」の住み分けが不十分

こういったことが可能なのは、ドイツでは「学校は勉強をするところであり、子どもの人間教育は家や親がやるもの」といういわば「住み分け」ができているからです。

日本の学校の給食といえば、単にランチを食べる、という意味合いだけではなく「食育」の要素もあります。実は私はこの日本のスタイルが好きなのですが、やはりドイツの学校で食事を通して生徒に食育をするのは難しいと思います。

というのも、ドイツでは食事について「個」や「各家庭の方針」が尊重されているため、全員の生徒に「好き嫌いなくバランスよく食べましょう」などと教えることは難しいからです。

ベジタリアンの家庭もあれば、宗教上の理由から子どもに牛肉や豚肉を食べさせない親もいます。そういったことに先生が対応するのは不可能であり、食事に関しては全て親や家族に責任があるという考えです。

食事に限らず、服装や身だしなみなどの生活態度についても責任は全て家庭にあるとされているため、学校がそういったことに「口出し」することはありません。

生徒にSNSを使うことを禁じたり、学校の中どころか「ドライヤーを使うことは禁止」と家庭の中にまで校則という名のもと介入しようとするニッポンの学校とは真逆です。