日本でも医療現場が崩壊する恐れが現実味を帯びている

朝日新聞の社説は緊急事態宣言を出すことに否定的だと思っていたが、4月7日付の朝日社説は「宣言に踏み切るかどうか、科学的知見を踏まえた慎重な判断が求められ、政府も『伝家の宝刀』という言葉を使って抑制的な姿勢を見せてきた。だが欧米を中心に爆発的な流行拡大が起こり、日本でも感染者が増えて医療現場が崩壊する恐れが現実味を帯びている」と指摘し、宣言肯定に傾いた。

朝日社説は、医療崩壊に対する不安や恐怖から宣言肯定に舵を切ったのだろうか。医療が崩壊すれば、多くの患者がまともな治療を受けられなくなる。医療崩壊というだれもが防ぐべきだと考える、急所を突かれることを避けたのかもしれない。

そんな朝日社説も翌4月8日付は大きな1本社説に「首相が緊急事態宣言 危機乗り越える重責自覚を」との見出しを掲げ、こう言い切る。

「特措法に基づき、知事の権限で行う外出自粛の要請や商業・娯楽施設などへの休業の要請・指示に罰則を伴う強制力はないとはいえ、やはり法的根拠のある措置は重い。自治体が休止を求める施設はかなり幅広くなりそうで、日々の生活への影響は大きいと言わざるを得ない」
「臨時の病院開設のための土地の強制使用や、医薬品や医療機器の販売の要請・収用など、強制力のある命令もある」

8日付の朝日社説は緊急事態宣言を否定している。前日7日付の宣言を肯定した社説は、大きなブレだったのか。ブレる新聞社説ほど頼りないものはない。

肯定したり、否定したりと大きくブレる新聞社説は頼りない

そんなことを考えながら読み進むと、朝日社説はこう書いている。

「朝日新聞の社説は、市民の自由や権利を制限し、社会全体に閉塞感をもたらす緊急事態宣言には、慎重な判断が必要だと主張してきた。特措法にも『(自由と権利の)制限は必要最小限のものでなければならない』という『基本的人権の尊重』の項目がある。その重みを十分踏まえた対応を求める」

やはり朝日社説のスタンスは宣言に否定的なのである。

通常、社説はその日の午前中に10人ほどの論説委員たちが大きな机を囲んで1~2時間程度議論し、その議論の内容を1人の論説委員がまとめ上げて社説の記事にする。書いた後にも他の論説委員たちが社説記事のゲラをチェックする。たぶん議論やチェックの過程でスタンスがブレ、その結果として宣言を肯定するような社説(7日付)が出来上がった可能性はある。

理由はどうであれ、新聞社説を読み続けている読者にはいい迷惑である。