前に進まない一番のネックが親戚の存在

1つ目は親族とのコンセンサスを得ることだ。ヤシロでは先の実績の何倍もの相談を受けてきた。いざ墓じまいしようとしても、前に進まない一番のネックが親戚の存在なのだという。

「特に問題なのは、長男が亡くなった後、その奥さんが墓じまいを考えるケースです。嫁であるために発言権が弱く、義理の弟や妹の反対意見に押されてしまい、にっちもさっちもいかなくなることが多いのです。当の奥さんには『田舎の義理の実家の墓には入りたくない』という思いもあって、次第に気持ちが焦っていきます。ですから長男である夫が元気なうちに、親族間で話し合っておくことが大切です」

そして2つ目の注意点は、菩提寺などの寺院墓地にお墓がある場合にお寺の理解を得ること。改葬許可申請書には「埋葬事実証明」を添付する必要があり、墓地の管理者の署名・捺印が必要になるからだ。

「共同墓地や公営墓地は問題ないのですが、特に古くから墓地を管理している菩提寺の場合は特に気をつけないといけません。お寺さんの立場からすると、先祖代々のお墓を墓守してきたという思いがあります。それがある日突然、電話で『墓じまいをします。長い間お世話になりました』といわれたのでは、『ちょっとお待ちなさい』という気持ちになるのも無理はないでしょう。

それだけに、お盆やお彼岸のお墓参りの際のご挨拶など、普段からのお付き合いが大切になってきます。墓じまいの際は直接出向いて、『高齢になって毎年のお墓参りが辛くなってきた』とか、『後を継ぐ子どもがいない』とか、きちんと理由を示しながら墓じまいについてご相談することをお勧めします。丁寧に説明することが大切です」

よく「離檀料」でトラブルになるという話を聞くが、「実際はそれほど大きな問題になる例は多くありません」と八城さん。それでも、400万円の離檀料を請求されたといった事例もあるそうなので、どうしても話し合いがうまくいかない場合は、弁護士や行政書士に相談して内容証明を送るなどの措置も必要になることもあるという。

「離檀料には法的な義務はありませんが、墓じまいではお墓の魂を抜く『魂抜き』をお寺さんにしていただかなければいけません。長年お世話になったお礼も含め、お骨1人分で5万円くらいをお布施として包むのがよいと思います」と八城さんはアドバイスする。

「墓じまいは『親の子孝行』だと考えています」と話す八城さん。残された家族や親族へ負担をかけないためにも、自分の代できれいに処理したい。

(撮影=熊谷武二)
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