景気が悪くても安く安心して納骨できる

「墓じまいのニーズに気が付いたきっかけは、08年のリーマン・ショックの頃でした。前年の07年に開園した北摂津池田メモリアルパークに、まったくお客様が来なくなったのです。そして、景気が悪くても安く安心して納骨できる施設があればお客様に来てもらえるのではと考え、もともと霊園の中央に設けていた合祀墓をリニューアルして合祀永代供養墓『なごみ霊廟』として前面に押し出してPRしました」

先に触れたように合祀墓は複数の人の遺骨を一緒に葬るもので、個別にお墓を設けるよりも格安な価格で提供できる。当初、八城さんが想定した顧客は、自分たちで建てたお墓を継承してくれる子どもがいない人だった。しかし意外なことに、子どもはいるけれども遠く離れた東京や名古屋で暮らしていて、田舎にある実家のお墓の継承はとても無理そうであるし、その子どもたちにお墓の管理の負担をかけたくないといった問い合わせが相次いだ。

「たとえ自分たちで田舎のお墓を大阪に引っ越しさせても、いずれ無縁墓になりかねないわけです。それならば、自分の代で責任を持ってお墓を閉じてしまい、遺骨を合祀永代供養墓に葬ったらどうかというご相談が数多く寄せられました。そこで、取引のあった墓石の施工業者と、お墓の撤去に関するビジネスプランを立てました」

そして、09年3月に生まれたのが「ヤシロの墓じまい」の基本プラン。お墓の規模に応じた基本料金が設定され、そこにはお墓の撤去や廃石材の処分などが含まれている。

具体的には、基点となる霊園から片道2時間、作業時間3時間程度、2トントラック1台で積んで帰って来られることを基準において、お墓の規模が2平方メートル(約1畳)までだと19万8000円(税別)、2~4平方メートル(約2畳)になると24万8000円(同)、そして4~6平方メートル(約4畳)までなら29万8000円(同)。距離が遠かったり、お墓が大型だったり難工事をともなう場合などは別途見積もりをとる。墓じまいを行っている業者は日本全国にいるが、これまで1000件を超える実績のあるヤシロの基本料金が業界標準になっているので、目安にするといいだろう。

併せてヤシロでは墓じまいした後の遺骨のアフターフォローとして、自社の霊園にある合祀永代供養墓の活用を提案している。定期的な合同供養祭による永代供養が行われるなごみ霊廟の場合、一人分の納骨と永代供養の費用が別に10万円(同)が必要になるものの、利用する人が多いそうだ。

実際の墓じまいの流れは図の通り。八城さんは「住民票を移すのと同じイメージです。役所の手続きは形式的なもので難しくありません。改葬許可申請書も、現在は大半の自治体でホームページからダウンロードできるようになっています」と説明したうえで、「ただし、スムーズに行ううえで大事なポイントが2つあります」と指摘する。

こう進んでいく墓じまい