常識が創造性を邪魔しているかもしれない

たとえば、パソコンの壁紙に紙幣の画像を使っていると、人はエゴイスティックに振る舞うようになり、寄付を渋ったり、他者との交流を深めようとしなくなったりします。また、ほんの少しだけ石鹼のにおいをつけた部屋にいると人はそれまでよりきれい好きになったり、会議でテーブルにブリーフケースを置くと急に競争意識が増す、ということも知られています。

中野信子『空気を読む脳』(講談社+α新書)

フェルスターは絵の実験をする前にこんな実験をしています。

過激で反社会性の高い技術者と保守的な技術者の、行動や生き方、外見について短い文章でまとめてもらい、その後に創造力テストを行いました。すると、過激で反社会性の高い技術者について考えた被験者のほうが、はるかに創造性が高くなっていたのです。

私たちの創造性は、常識や、社会に合わせなければという思いに無意識的に縛られているのかもしれません。遺伝的に社会性が高くなりがちな素因を持つ日本人は、自分の創造性を発揮する前に、社会の一員であることに喜びを感じることが多くなりがちです。

ただ、ひとりになれる場所や、社会性を考えなくてもすむフィールドでなら、その創造性を十二分に発揮できているという現実もあります。時には本家ノーベル賞以上に創造性が求められるイグノーベル賞ですが、その受賞者には日本人が非常に多く、13年連続で受賞するなど活躍が光っています。

肩の力を抜いて個人が自由な創造性を発揮できる分野だからこその結果である、と言えるでしょう。注目された結果、むやみに研究費などが乱発されて、クールジャパンのような大惨事にならないかだけが個人的には心配です。

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