生涯のうちに男性の62%、女性の47%が罹患りかんするがん。一方で治療法の進歩により、早期に発見できれば治る病気にもなっている。たが、東京女子医大がんセンターの林和彦センター長は「多くの人は自覚症状が出てから病院に来る。その多くは進行がんになってしまっている」と嘆く――。
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今や日本のがん患者の5年生存率は66.4%。早期に見つければ助かる率はさらに上がるが――。(※写真はイメージです)

どんなに啓発活動をしても40%強止まり

日本では1年に100万人の人ががんにかかり、そのうち37万人の人が亡くなります。

100万人は富山県や秋田県の人口と同じ。37万人は、例えば大阪府吹田市の人口と同じです。毎年1つの県の人口と同じ数の人ががんになり、1つの市と同じ数の人ががんで亡くなるのです。

生涯のうちに男性の62%、女性の47%ががんにかかります。決してテレビの中の有名人だけの話ではなく、どの人にも今日にでも起こりうることなのです。

そして100万人のうち37万人の人が亡くなるということは、逆に言うと残りの60万人以上は助かるということ。がんは決して「かかったら死を覚悟するしかない病気」ではなく、3人に2人が助かる病気なのです。実際、国立がんセンターが2019年12月14日に発表したデータによると、日本全国のがん患者の5年生存率は、最新の集計で66.4%に達しています(*1)

しかし「あなたはがんです」と言われたとき、冷静に反応できる人はほとんどいません。みな「なんで私が。がん家系じゃないのに」「なんてついてないんだ」そして何より「まさか、自分ががんになるなんて」と反応します。これはわれわれにとっては残念なことです。

がん対策には政府の予算がつけられています。全国各地に「がんセンター」が作られ、2006年には「がん対策基本法」も公布され、「がんは2人に1人がかかる病気」という啓発活動もされてきました。それでも日本人の多くは、がんを自分のこととして見ていません。

日本人は先進国の中でもがん検診を受ける人の割合が最も低い国です。がん対策基本法ができた2006年の時点では、どのがんの検診率も軒並み20~30%台でした。それから十数年かけて、国を挙げて啓発活動をし、ようやく40%程度まで上がってきました。がん検診の啓発活動は今も盛んに行われていますが、検診率は40%強まで上がったところで止まっています。これは80%あるアメリカの半分です。