新型肺炎で中国バブル崩壊のリスク

現在、中国はわが国の教訓を重視して改革に取り組むよりも、減税や公共事業などによる経済運営に、再度傾注しつつあるとみられる。このタイミングで新型肺炎が発生した影響は大きい。

真壁 昭夫『ディープインパクト不況 中国バブル崩壊という巨大隕石が世界経済を直撃する』(講談社+α新書)

中国の経済活動にはかなりの混乱が生じ、生産、物流、消費などへの影響が顕在化しつつある。景気は一段と減速する可能性がある。その展開が鮮明となれば、中国の企業・家計・地方政府などの資金繰りは悪化するだろう。不動産バブルの延命は難しくなり、徐々にバブル崩壊のリスクも増すはずだ。

それは、世界経済にとっても無視できないリスクだ。2004年から2018年までの間に、世界の製造業が生み出す付加価値全体に占める中国のシェアは9%から28%まで増えた。中国の生産活動に支障が出ると、世界のサプライチェーンはかなりの制約に直面する。

一例として、わが国の自動車業界では部品の調達が困難になり生産を一時停止する企業がある。米国ではアップルが1~3月期の業績目標の達成が困難と表明した。

巨大隕石の衝突にたとえた「ディープインパクト不況」とは、この不動産バブルと、それにともなう金融システムの崩壊が世界経済に与える深刻な影響のことだ。

世界経済が大きく混乱する

新型肺炎の発生による中国の景気減速や不動産バブルのリスクに世界経済が耐えられるか否か、先行きは見通しづらい。世界経済は米国の個人消費に支えられ、どうにか安定を保っている。ただ、米国の労働市場では求人件数が減少するなど、鈍化の兆しが出ている。さらに、中国経済の減速などからドイツや韓国では先行き懸念が高まっている。

昨年10~12月期、消費増税などの影響からわが国の実質GDP成長率は前期比年率でマイナス6.3%だった。中国経済の減速から工作機械受注などが減少する中、新型肺炎により観光や生産活動などの面でわが国経済には下押し圧力がかかりやすい。

新型肺炎は、中国の不動産バブル崩壊のリスクを上昇させるなどし、世界経済全体にかなりのマイナスの影響を与える恐れがある。状況によっては、新型肺炎が中国経済のハードランディング懸念を高め、中国からの資金流出圧力が高まる展開も想定される。その場合、中国の不良債権問題などが深刻化すると警戒する市場参加者が増えるなどし、世界経済が大きく混乱する可能性は軽視できない。

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