中国の主要70都市の住宅価格が上昇した理由

2018年以降、中国経済の減速がかなりはっきりしている。2019年、中国の実質GDP成長率は6.1%と29年ぶりの低水準に陥った。新型肺炎は、景気減速に追い打ちをかける可能性がある。

同時に、中国の不動産市場ではバブルが残っている。背景には複数の要因がある。一つに、地方政府が経済成長の実現を追求し、不動産開発など投資への依存度が高まった。地方政府は、住宅開発に加えてインフラや構造物(ハコモノ)に投資し、党が定める経済成長目標の達成を目指した。それが地方の共産党幹部の出世を左右する。

具体的な仕組みとして、まず、地方政府は「地方融資平台」と呼ばれる投資会社を設立する。地方融資平台は、債券の発行などによって資金を調達する。それを用いて不動産開発や公共事業などの投資が進む。

同時に、中国本土の市場参加者らは、共産党政権が景気の安定にコミットしていると考え、先行きを楽観したはずだ。彼らは、低金利環境の中で投資(投機)のための資金を借入れ、住宅などに投資した。2015年夏場、上海の株価が大きく下がって“株式のバブル”がはじけた後、資金は不動産市場に流入し、中国の主要70都市の住宅価格は上昇した。

バブル崩壊後の日本経済を徹底研究

ただ、未来永劫、資産価格が上昇することはない。バブルが崩壊すると、バランスシート調整と不良債権処理という“バブルの後始末”が不可避となる。劉鶴(リュウ・ハァ)副首相をはじめとする共産党の改革派はバブル崩壊後の日本経済を徹底研究し、不良債権処理と構造改革を重視した。

当初、米中の通商摩擦が激化する中、習近平国家主席は改革派の意見を尊重した。2019年4月19日の党中央政治局会議において供給サイドの改革を深化させることが重要との見解が示されたのは、よい例だ。

同時に、中国は先端分野の産業振興策である「中国製造2025」を重視し、国家主導で人工知能や半導体などの生産能力の引き上げに取り組んだ。それは、ヒト・モノ・カネの経営資源を在来産業から先端分野に再配分し、中国経済のダイナミズムを高めるための改革の推進といえる。