整理で大切な捨てる勇気

実は、その整理で最も大切なのが「捨てる勇気」なのだという。洋服などと同じで、「また使うだろう」という気持ちが働いたり、「捨てるのはもったいない」という心理が作用しがちだ。思い出の品などもなかなか捨てられないが、それらをスパッと捨てる勇気が求められる。

その際に必要か不必要かの判断は、「使用頻度」で決めるようにする。たとえば、半年以上、または1年以上使っていないものは捨てるというように自分で決めるのだ。「社内書類は会社によって法律上の関係などから保管の期間が違うと思いますので一概にはいえませんが、確認のうえで期限を決めて処分しましょう」と権藤さんはいう。

そして、整理の切り札として「赤札活動」もオススメだそうだ。トヨタでは現場のリーダーが定期的にさまざまな物品に対して、「使うもの」「使わないもの」「使えないもの」に分けて、後者2つに赤札を貼る。そして期限を区切り、チームの全員で判断して、残すか捨てるかを決めている。

これを自分のデスクまわりにも応用するのだ。終了したプロジェクトの書類やファイル、処分に迷っているものなどに赤い付箋を貼り、必要に応じて周囲の人の判断をあおぎながら、本当に使わないもの、使えないものを処分していったらよい。

整頓のポイントは元の場所に戻すこと

そうやって整理で必要なものを残した後は、整頓だ。ここでのポイントの1つは、元の場所に確実に戻すこと。「そのためには、決められた置き場・置き方を明示しておくこと。そうすれば探す必要がありません」と権藤さんは話す。そのためにルールを決めて、迷わずに戻せる仕組みにしておく。

そのトヨタ流のユニークな仕組みの1つが「姿置き」だ。写真左の上下のようにそれぞれの文具類の形に枠を切り取り、その場所にきちんと置くように決めている。「その物の姿を保管場所に描いておくと、自然と元に戻されるようになります。このあたりに戻しましょうというのでは次第に乱れます」(権藤さん)。

また、整頓に関するトヨタ流テクニックのもう一例が、「ラインを入れる」というもの。書類のファイルを並べたときなど順番が変わらないように、きちんと並べた状態で、背のラベル部分に斜めのラインを一本入れておくのだ(写真右の下)。ファイルを別の場所にしまうとラインが凸凹になる(写真右の上)ので間違いに気づくという仕掛けである。

探し物で貴重な時間をロスするのはもったいない。整理・整頓で仕事の効率アップを図ろう。

若杉アキラ(わかすぎ・あきら)
時間ミニマリスト
週3起業家、シニア不動産コンサルタント。1983年生まれ。週90時間労働で体調を崩し、時間のミニマル化を実践。著書に『最適な「人生のペース」が見つかる捨てる時間術』がある。
 

権藤次男(ごんどう・つぎお)
OJTソリューションズ・エグゼクティブ・トレーナー
1959年、鹿児島県生まれ。78年、トヨタ自動車入社、堤工場に配属。96年、広瀬工場に異動。2017年、OJTソリューションズに異動。スーパー、卸売業などを担当。
 
(撮影=石橋素幸、加々美義人)
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