「瀬戸際外交」と批判される北朝鮮のやり方
沙鴎一歩の憶測だが、金正恩氏は一方的に交渉の期限を区切ってミサイルを発射し、重大な実験を繰り返すことなどによって軍事的に緊張感を高め、それによってアメリカのトランプ大統領から制裁解除などの譲歩を引き出そうと考えているのだろう。
これこそが「瀬戸際外交」と批判される北朝鮮のやり方である。
トランプ大統領は昨年4月のICBM発射実験の中止表明を大きな成果としている。トランプ氏としては米下院で大統領弾劾訴追の手続きが進む逆風も吹くなかで、来年11月の大統領選を有利にするために、北朝鮮対策でさらなる成果を求めたいところだ。
そうかといって金正恩氏の挑発をこのまま放っておくわけにもいかない。トランプ氏は牽制球を投げ、金正恩氏に対抗姿勢を示している。
たとえば12月8日にはツイッターに「敵対的な行動に出れば、金正恩はすべてを失いかねないだろう。彼は大統領選に干渉したいとは思っていないはずだ」と投稿した。
ポイントは12月下旬の「朝鮮労働党中央委員会総会」
トランプ氏は軍事行動も怠らない。12月に入って米軍は、無人偵察機グローバルホークや弾道ミサイル観測機「RC-135S」コブラボールを朝鮮半島周辺に投入した。B-52戦略爆撃機も日本の近くを飛行させるなどして北朝鮮を警告している。
12月下旬には、朝鮮労働党中央委員会総会が開かれる。重大なことを決定するといわれるこの総会で、金正恩氏は核・ミサイル開発をどう議題にするのか。そこを見極める必要がある。年末から年明けにかけてが、ひとつの山場である。
12月17日付の読売新聞の社説はこう書き出す。
「北朝鮮が非核化協議で米国の譲歩を引き出すため、軍事的緊張を高める動きを見せている。日米など関係国は挑発への警戒を怠らず、冷静に対処しなければならない」
要は北朝鮮の挑発に乗るなということだろう。
しかし沙鴎一歩はこう考える。挑発に乗った振りをしてあの不気味な北朝鮮をうまく操るべきだと。剣術で言うところの「肉を切らせて骨を断つ」だ。
ディール(取り引き)の成果ばかりを重視する、思考形態が割と単純なトランプ氏にこの高等テクニックができるかは疑問だ。だが、いまはトランプ氏に期待するしかない。