豚肉と鶏肉を食べなかった地域の人が食べるように

一見して分かる通り、50年数前には、牛肉と鶏肉の「西高東低」、豚肉の「東高西低」の地域構造は今より明確だった。現在も、そうした傾向は残っているものの、かつてと比べると明確ではなく、物流の進化などにより食のパターンの全国平準化が進行したことをうかがわせる結果となっている。

全国平準化の進行は、こうした「東西」といった大きな地域別の傾向の変化とともに近隣県どうしの差異が小さくなった点にもあらわれている。図では近隣県における割合の差をあらわすギザギザがずいぶん滑らかになっていることからそれがうかがわれる。

平準化の指標としては、「データのばらつき」の程度をあらわす変動係数が使われることが多い。肉の地域別消費額の変動係数を調べてみると、図表7で見るように、牛肉、豚肉、鶏肉の値は、それぞれ、この50数年の間に3割減、8割減、7割減とすべてで大きく値を減少させている。つまり、「データのばらつき度」が下がり、平準化していることを表している。特に、豚肉と鶏肉のばらつき度の低下はめざましい。これらと比べると、牛肉は、なお、東西差がかなり残っているといえる。

50年数前より牛肉の「西高東低」の格差が縮小

牛肉消費は図表6で分かるように、かつては、北陸、近畿、中四国で特段に多く、豚肉消費の多かった東日本で全体的に少なく、西日本でも鶏肉消費が多い九州では比較的少なかった。こうした傾向は今でも成り立っているが、明らかにその程度は弱まっている。

鶏肉消費は、かつては、純粋に西高東低の地域構造をもっており、九州がもっとも割合の高い地域となっていた。今は、消費が全国的に平準化した中で、東北と九州がやや多いというパターンになっている。

なぜ、鶏肉の消費が全国的に平準化したのか。

養鶏は、養豚や肉用牛と比べても飼料代が経費として大きいので、飼料の運搬費もバカにならない。わが国では、飼料は主に輸入に頼っている。その飼料の輸入・生産拠点は、東日本の太平洋岸と南九州に集中立地している。鶏肉消費が東北と九州で多いのは、そこから遠くない地域にブロイラー生産が集積している影響があると考えられる。