家族が必要とする食料が買えなかった経験がある世帯の率を調査

図表1で参照したのは厚生労働省の「国民健康・栄養調査」のデータだった。「食料に困ったことがあるか?」という質問に対する回答を分析したものだが、このデータでは地域別の困窮者の割合は分からない。

それが分かるのは、同じ厚生労働省の社会保障・人口問題研究所による「生活と支え合いに関する調査」である。正確に言うと、この調査でも都道府県別のデータは得られないが、地方ブロック別のデータは得られる。そこで、「地方ブロック別の食料困窮者割合」と「豚肉比率」との相関図を作成した(図表5参照)。

なお、豚肉比率は、2人以上の世帯1世帯あたり1カ月の支出金額における生鮮肉の牛・豚・鶏肉に占める豚肉比率のことを指し、困窮世帯比率は、過去1年間に経済的な理由で家族が必要とする食料が買えなかった経験が(よく+ときどき)あった世帯の比率を指す。

また、豚肉比率は、県庁所在地だけでない県別のデータが得られ、地方ブロック別の値を求めることができる「全国消費実態調査」(総務省統計局)の結果を使用した。

北海道・東北、九州・沖縄で豚肉比率が高い

これを見ると、豚肉比率(縦軸)は東日本で高く、西日本では低いという傾向が認められる。ただし、東日本でも西日本でも、各地方ブロックを細かく見ると、困窮世帯比率(横軸)が高い地域ほど豚肉比率が高くなるという特徴も認められる。

すなわち、東日本の中では、困窮世帯比率が高い北海道・東北で豚肉比率が最も高く、最も困窮世帯比率が低い東京圏で豚肉比率は最も低くなっている。

西日本では、困窮世帯比率が最も高い九州・沖縄で豚肉比率が最も高くなっている。もっとも西日本では、最も豚肉比率が低いのは四国であるが、四国がもっとも困窮世帯比率が低いわけではなく、東日本より両指標の相関度は低くなっている。

中京圏は東日本と西日本のちょうど中間の位置を占めている点も興味深い。

このように、肉の好みは東西の文化的な嗜好の差のほうが大きい。西日本では困窮者でもあまり豚を食べないのに対して、東日本では、裕福な者も豚を多く食べるのである。

ただ、こうした文化的なバイアスを取り除いてみれば、困窮者ほど豚肉を食べるという傾向が確かに認められるのである。(後編に続く)

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