東日本の豚肉好き、西日本の牛肉好きが極めて明らか
これは、実際の家計の支出から見た肉の嗜好であるが、人々の意識ではどうなっているだろうか。少し古いデータになるが、日本経済新聞社の食の地方性を話題にしたWEBサイトにおける読者投票で「肉といえば何の肉か」の意識を探った結果のデータを図表4に掲げた。
これを見ると、県民の意識上からも東日本の豚肉好き、西日本の牛肉好きが極めて明らかである。ただし、鶏肉消費の本場の九州でも肉といえば鶏肉とまでは考えられておらず、むしろ、肉といえば牛肉という意識であることが分かる。
さらに細かく言えば、北陸の富山、石川や南関東の東京、埼玉、神奈川は、牛肉より豚肉の消費が多い点が目立っているのに、意識上は「肉といえば牛」という西日本の嗜好を示している。実際の消費を越えて意識上は牛肉優位の考え方が根強いといえよう。
豚肉を好む地域は貧しい地域なのか?
以上の統計データから、「困窮者が多い地域で豚肉が好まれている」と言うことはできるかと問われれば、そう断言することはできない。
関東と近畿の2エリアで比較してみると、食の好みは、関東は豚肉、近畿は牛肉であることは明らかだが、関東より近畿のほうが困窮者が少ないとは言えない。困窮者が多いのは、3大都市圏より地方圏だと考えられるが、肉の嗜好マップとこの区分は一致しない。
ここまでの考察で「地域的な肉の好み」と「困窮度別の肉の好み」とは必ずしも一致しない、という結論では筆者は満足できない。そこで、もう少しデータ分析を深めてみよう。