「金銭目的で連絡してくるパレスチナ人も少なくない」

1967年に旧市街を含む東エルサレムを占領したイスラエルは、聖地の現状を変えないと約束した。このため、ユダヤ教徒は神殿の丘で礼拝ができず、丘の西側にある「嘆きの壁」で祈りを捧げる。だが、キング氏はこう語る。「ユダヤ人の心はいつも神殿の丘に向いている。世界のどこにいても、嘆きの壁にいても、私たちはいつも神殿の丘の方角を向いて祈っている。世界で唯一のユダヤ教の聖地だからです」

渡辺丘『パレスチナを生きる』(朝日新聞出版)

キング氏はグーグルマップで東エルサレムの地図を拡大してみせた。「旧市街、(キリストが昇天した場所と伝えられる)オリーブ山、(旧市街近くの)ダビデの町といったエリアが一つの層。(東エルサレムの)ベイトハニナは別の層、シェイクジャラなどがまた別の層だ。私たちの考えはそれぞれの層にユダヤ人を住まわせ、ユダヤ人の居住区を結びつけていくというものだ」。

この団体も東エルサレムがヨルダン統治下にあった1948~67年にユダヤ人の所有が失われたとする物件を見つけ出し、パレスチナ人所有者に売却を迫っている。キング氏によると、団体発足から13年間で数十人のパレスチナ人が物件を売却した。買い手の約8割は、米国を中心に海外に住む裕福なユダヤ人だという。「金銭目的で自分から私に連絡してくるパレスチナ人も少なくない」とキング氏は言う。

「イスラエル国籍のアラブ系の人物」を間に挟む

ただ、先に述べたように、パレスチナ人がエルサレムの土地をユダヤ人に売却することは、パレスチナ自治政府が禁じている。「そんなことがあり得るのか」と尋ねた私に、キング氏はこんな説明をした。「私たちは彼らを守るために、中間の人物を挟ませる。その手法とは、自治政府による規制を気にしなくて良いイスラエル国籍のアラブ(パレスチナ)系の人物に物件を買わせ、彼がユダヤ人に転売するというものだ。このやり方なら、パレスチナ人は『ユダヤ人に売ったわけではない』と釈明ができる」

キング氏は360度の風景が見られるグーグルマップのストリートビューで、東エルサレムにあるUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)事務所の入り口付近や敷地内を映すと、語気を荒らげて「違法だ!」と10回も繰り返した。「イスラエルの法律では標識にヘブライ語の記載を義務づけているのに英語とアラビア語しかない。東エルサレムは誰のための場所でもあるが、イスラエルの法律に従わなければならない」

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