アクティブに情報処理を結びつけることもできる

もう一段階複雑な、「オペラント(道具型)学習」というものがあります。たとえば、マウスがレバーを押したら報酬(餌)を与えることをくり返すと、やがて高頻度でレバーを押すようになったり、レバーを見るだけでそれを報酬と感じるようになったりするものです。

これは、パブロフ型のような受け身の学習ではなく、自分の行動選択が「報酬」か「罰」かいかなる結果をもたらすかを学習し、行動選択を変えていく、よりアクティブな学習様式です。ただ、この場合も、神経がつながるメカニズムは変わりません。

元々、「1.レバーの視覚的処理をおこなう視覚ニューロン」と「2.レバーを押す運動ニューロン」には何のつながりもありません。「レバーを見る」後に「レバーを押す」行動を起こした結果、たまたま報酬(餌)を得るという一連の体験をくり返すことで、1.と2.の伝達効率が高くなります。

また、1.と「3.報酬を扱うニューロン」同士のつながりも強くなります。結果、マウスの1.ニューロンが活動すると、3.ニューロンも自動で活動し、現象として「レバーを押したくてたまらないという渇望」のような状態になると考えられています。

なぜ赤提灯を見るとふらりと入りたくなるか

人間でも、覚醒剤中毒の人は、注射器や腕を縛るゴムバンドを見てしまうと、猛烈に注射器で覚せい剤を打ちたい衝動に駆られます。それも、「視覚的な手がかり」が、「注射器を打つ」という運動行為を自動的かつ強烈に駆り立てる学習プロセスが背景にあるためと考えられます。

茨木拓也『ニューロテクノロジー』(技術評論社)

私が赤ちょうちんを見てしまうと、ふらりとその居酒屋に立ち寄ってしまうのも、「赤ちょうちん」という視覚的手がかりを処理する私の脳内のニューロンと、「立ち寄る」ための運動を起こすニューロンが(勝手に?)つながっているから、仕方ないのです。

このように感覚的な手がかり→行動→報酬のサイクルがくり返されて強化され、自動的に行動が起こる現象を「習慣」、それが本人の健康を害する程度にまでなると「中毒」、中間のグレーゾーンを「嗜好」と呼ぶのではないかと思います。

いわゆる「マーケティング」や「ブランディング」は、これら私たちの脳の学習メカニズムをターゲットとしたものであり、脳の知識、そして脳を見る各種技術(ニューロテクノロジー)をビジネスパーソンたちにも積極的に活用していただきたいと思います。

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