関係ない情報処理を結びつける一番シンプルな学習

いちばん単純な学習が「パブロフ型条件づけ」というものです。あなたも「パブロフの犬」を聞いたことあると思います。ベルを聴くとよだれが出るようになるというアレです。

当初、ベルの音は、イヌにとっては好きでもなんでもないものです。つまり、「ベルの音を処理する聴覚ニューロン」と「よだれを分泌させるニューロン」の間にはほぼつながりがないわけです。ただ、「ベルを聴く」→(餌が出る)→「よだれが出る」をくり返していくと、次の3つのニューロンが連続的に活動することになります。

1.ベルの音を処理する聴覚ニューロン
2.餌を視覚的に処理するニューロン
3.よだれを出させるニューロン

2.と3.は元々強くつながっていて、2.が活動すれば3.も活動するようになっていますが、1.と3.のつながりがないニューロン同士も同期して発火する(細胞内電位がプラスになる)と、両者の接続性が強くなります。これが学習のメカニズムです。

ニューロンの働きを解説

どんなメカニズムかを単純化しつつ、少し詳細に話します。

1.に続いて3.のニューロンが発火すると、「NMDA型受容体」という3.のニューロンの細胞膜にある受容体をふさいでいたマグネシウムイオンがとれて、カルシウムイオンが流入してきます。カルシウムイオンが流れこむと、3.のニューロン内にある「AMPA型受容体」(1.の細胞から神経伝達物質(グルタミン酸)を受けとって、3.の細胞内の電位をプラスにするために細胞外からナトリウムイオンを細胞内に通過させる、キャッチャー兼ゲートキーパーの役割を持った受容体)の「在庫品」が1.との接合部(シナプス)の細胞膜へと移動していきます。

これはつまり、1.の神経細胞からグルタミン酸を受けとるキャッチャーが増えた=伝達効率が上がった状態といえます。たとえば、これまでは1.が3.を活動させるためには1億個のグルタミン酸が必要だったところ、学習成立後には10個で済むようになった=ちょっとでもベルの音を処理する聴覚ニューロンが活動すればすぐによだれを出すニューロンも活動するようになった、というような状態です(※)

※ものすごく単純化して説明しているので、実際にはもっとたくさんのニューロンが介在していたり、複雑な処理があることを念頭においてください