〈草食動物と肉食動物ほども〉違う新人類=ネオサピエンス
軋轢を避け単独生活を好み、人よりも物、物よりも情報を愛し、ルールと平等性を求める回避型。ヨーロッパや日本での近年の調査では、その割合は約3割に達している。人類はいま〈新たな進化の段階に突入〉した、と著者は指摘する。他人への共感や心の絆に価値を置く〈旧人類〉とは、〈草食動物と肉食動物ほども〉違う新人類=ネオサピエンスが登場したのだ。
回避型は〈旧人類〉と比べて、オキシトシンの分泌が少ない。オキシトシンは、愛する存在と視線を交わすことで育まれるホルモン物質だ。回避型も現代の奇病と同様、愛着崩壊の産物なのだ。
「愛着崩壊」現象の要因として、60年代から始まった女性の社会進出と、家族の崩壊が挙げられる。虐待やネグレクトが子供たちを襲う。
そこへ起きたのが、IT革命だ。わが子の顔よりスマホの画面を見る親の数は増えるばかり。情報デバイスへの長時間の耽溺は、偏った神経回路を酷使して脳機能を低下させ、その変化は世代を超えて受け渡されていく。
しかし、結婚や出産に消極的な回避型の割合が、なぜ増えるのか? 最新の進化論をひも解きつつ、壁が打ち破られる様が丁寧に説き明かされる。AIが統治する社会に、回避型は最もよく似合う。
彼らが圧倒的多数を占める日は、すぐそこまで来ている。そのとき、家族の愛着などという面倒な束縛は捨て去られるだろう。最終章で語られる近未来の物語は、「進化」という言葉を借りた、人類滅亡への第一歩を示している。