正解は複数あるのが当たり前
実社会で「正解は一つでない」例を示しましょう。
卑近な例でいえば、就職活動です。よく学生から「事業会社に行ってからコンサルになるのと、新卒でコンサルになるのと、どっちが良いでしょう」と真顔で聞かれることがあります。正直、「どっちもあり」です。どっちを選んでも、それはそれで一つの人生です。選んだ道で真剣に頑張って、いい経験を得られるかが重要です。つまり、道を選んだ後のあなた次第ということです。
企業の例をあげましょう。ある新規事業に進出するか否か。重大な判断です。しかし、完全なる100点満点や、完全なる0点の判断というものはありません。あくまで、「進出しても市場参入が難しいので、成功確率は低い」とか、「市場の獲得が見込まれるので、進出すれば成功確率は高い」とか、ファジーな中での判断になります。そして、その後の成功を分けるのは判断した後、つまり就職活動の場合と同じく、道を選んだ後の取り組み次第です。
コンサルタントの仕事も正解は一つではありません。例えばある企業の業務分析をする際に、データを緻密に集めた定量分析を重視すべきなのか、それとも現場の意見のヒアリングを中心に定性分析を重視すべきなのか。どちらも考えられます。対象となる企業の特徴や業務の特性、クライアントの好みなどにより、「定量分析に比重を置いた方が、論理的な裏づけが強化される」とか「定性的に進める方が、納得感を醸成しやすい」とか、そういう効果を考慮して、よさそうな仕事のやり方を選択するのです。答えは無数にあります。選択したやり方でうまくいきそうになければ、適宜調整をする。あくまでクライアントのための仕事を完遂することが大切なのです。
いずれの例でも、唯一の正解なんて無いこと。そして、選択した後が重要であることがわかるでしょう。実社会では、未知への挑戦や想定外への対応の連続ですから、お勉強で設定される仮想世界とは違うのです。
参考文献-----------
『選ばれるプロフェッショナル』
ジャグディス・N・シース、アンドリュー・ソーベル著、羽物俊樹訳、英治出版