7年前の記事を読めば、物事の本質が見えてくる

それほど過去を振り返りたいなら、私は「逆タイムマシン経営」を勧めます。孫正義さんの唱える「タイムマシン経営」は、アメリカで成功したビジネスモデルを日本で展開して、大きな利益を得る経営手法のことです。私が言う「逆タイムマシン経営」は、情報とのつきあい方です。簡単に言えば、「新聞雑誌は7年寝かせてから読め」という話です。

メディアが流す情報には、本質のほかに、同時代のノイズがたっぷり詰まっています。たとえばインターネットというものが登場したとき、メディアは「インターネットは隕石だ。すべてが変わる」と主張しました。

いわく「2020年には、通勤という行為がなくなっている。すべての小売店はデジタル化している」。現実には、いまだに満員電車が走っているし、小売店も健在です。こうした論説は、インターネットを過大評価していたことがわかります。

情報というものは、寝かせることでノイズを落とすことができます。過去のアーカイブを見れば、本当の論理が見えるし、人間が持つ同時代のバイアスもわかる。そこで私は、ひとつの時間的な目安として「7年前の記事を読みましょう」と提唱しているわけです。

中国企業は味方でもあるし、脅威でもある

本書『テンセント』を手に取る人の中には、「日本にとって、テンセントは脅威かどうか」が気になる人もいるでしょう。しかし彼らは、こちらに向けてミサイルを撃ってくるわけではありません。

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日本の企業にとって脅威かどうかという問いに対しては、「ある企業にとっては脅威だろうし、別の企業にとってはいい会社だろう」と答えるしかありません。たとえば製菓会社のUHA味覚糖にとって、アリババほどいい会社はないでしょう。中国でマーケティングや販売を行うリソースをもたない同社が、アリババのプラットフォーム上に店舗を開いただけで、中国の地方や農村でキャンディーがどんどん売れているからです。