「GAFA」「BATH」という括り方が無意味な理由

同じような意味で、世間はテンセントとアリババに検索エンジンのバイドゥと通信機器メーカーのファーウェイを含めて「BATH」と名付け、アメリカの「GAFA」とどっちが勝つか、といった捉え方をします。「グローバル・メガ・プラットフォーマー」といった言葉を使って、括りたがるからです。

無料でダウンロードできるので、グーグルとアップルとフェイスブックとアマゾンがアメリカ証券取引委員会に出している有価証券報告書を、一度読んでみてください。4社の商売の実態をみれば、まったく質の違う企業だとわかります。

私はいつも言うのですが、GAFAと一括りにするのは、JR東海とクロネコヤマトとトヨタと俳優のジェイソン・ステイサムをひっくるめて「トランスポーター」と呼ぶようなものです。共通点は、運ぶことだけ。

呉 暁波『テンセント 知られざる中国デジタル革命トップランナーの全貌』(プレジデント社)

そこから何かを学べと言われるのは、「トヨタからかんばん方式を学べばいいんですか? それとも、ジェイソン・ステイサムみたいな格好いい男になればいいんですか?」と困ってしまうのに近いと思います。

価値判断をするときには、基準をどこに置くかが大切です。いたずらに中国を脅威に感じる必要はない。経営者の方々に申し上げたい。日本経済の停滞を嘆く暇があったら、もっと儲かる、価値がある商売をみずからつくって動かすほうがいい。顧客が喜ぶだけでなく、雇用もできるし、給料も払えるし、税金も払って社会貢献もできる。結果として株価も上がり時価総額も増える。経済停滞からの脱却は、そうした一つひとつのミクロな成果の集積としてしかありえません。

(構成=石井 謙一郎)
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