大切な友だちが見つかった矢先に起きた悲劇

美桜子さんはいじめの経験について、いじめた同級生のストレスの「ゴミ箱」にされたと表現し、何も考えられなくなり、心が麻痺し、自分の生きている意味を見失い、他人からみればたとえ短い期間であったとしても、いじめを受けている本人にはすごく長く感じた1年間だったと振り返っている。

そのうえで、高校生活ではいじめの経験を理解してくれようとする大切な友だちも見つかり、そうした友だちと本気で笑い合える日が来ることを楽しみにできるようになったことを明かし、その心境をこう表現している。

「私の長い長いトンネルは小さい小さい光の出口が見つかったのかもしれません」

しかし、高校2年の8月。母親が持病で検査入院をしていた日、一人きりになった美桜子さんは、知人にメールを送った。

「みんなが死ねって言ってる。苦しいから薬を飲んだ」

異変を感じた知人は、すぐに美桜子さんの友人に彼女の自宅へ急いで向かうよう連絡した。友人たちは美桜子さんに電話をかけ、美桜子さんは電話に出た。

しかし、すでに意識がもうろうとした様子で、途中から美桜子さんの声は途切れた。 8月18日未明。美桜子さんは自宅マンションの8階から身を投げて、16歳の短い人生を自ら閉じた。家のテーブルには、赤いペンで書かれた遺書が残されていた。

「まま大好きだよ。みんな大好きだよ。愛してる。でもね、もうつかれたの。みおこの最後のわがままきいてね。こんなやつと友ダチでいてくれてありがとう。本当にみんな愛してるよ。でも、くるしいよ。」

「目立ってうざい」という空気に彼女は苦しめられた

美桜子さんの死後、典子さんは娘がなぜ死ななければならなかったのかを考えてきた。

NHK取材班『データでよみとく 外国人“依存”ニッポン』(光文社新書)

その理由を知りたくて学校側を相手に裁判を起こした。一審では、いじめが自殺の原因だと認められた。しかし、二審では高校での友人とのあつれきなどによるストレスが自殺の原因だとして、いじめとの関係は認められなかった。

典子さんは「私の中では、美桜子のことはまだ終わってないんです」と話し、今でも美桜子さんの短い人生について考え続けている。

そして、美桜子さんがいじめられた原因のひとつに、彼女のルーツが関係していたのではないかと思っている。

「美桜子はハーフで目立ち、はっきりものを言ううざいヤツ。だからいじめてもいいということになったと思っています。日本は、波風を立てない、何かあっても何もなかったようにやり過ごす、異なる意見は和を乱すから悪。そういうものに美桜子は苦しめられ続けた」

※データや人物の肩書き、年齢、取材現場の状況などはすべて取材時のものです。

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