働きたいのに働く場を与えられないシニアの「理由」

1.就業継続への意欲について

メイテックでは、2017年と2019年の2回にわたり、65歳以上の男女1700人(以下、高齢者)に対して「シニアの労働観・実態調査」という調査を行っています。

2019年の調査では、「今後も働きたい」(とても働きたい+ある程度は働きたい)と考えている高齢者は38.2%であり、2017年(44.4%)と比べるとやや減っているものの、約4割の高齢者が就業意欲を持っていることがわかります。

働きたい理由としては、「収入を得たいから」(75.9%)がもっとも多く、2017年(71.2%)の傾向と変わりません。一方で、以下のように2019年と2017年の調査で大きな違いも見られます。

・「社会との接点がほしいから」 2019年 41.2% 2017年 25.1%
・「生活習慣を維持したいから」 2019年 41.2% 2017年 25.1%
・「職場で必要とされていたいから」 2019年 17.0% 2017年 40.0%

2017年から2019年の間に、「職場の中で活躍をしたい」というより、「健康や社会との接点を求める」高齢者が増えたといえます。日本人は、諸外国に比べて、家庭や職場以外の人間関係が希薄な傾向があるため、仕事を通じて社会との接点を得ようと考える人が多いのではないでしょうか。

写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです
2.再就職が難しい高齢者の現状

働きたいと考えていても、実際には働く場を与えられない高齢者は少なくありません。

メイテックの2017年の調査では、働く意欲はある(「とても働きたい」「ある程度は働きたい」)のに働いていないと回答した高齢者は20.8%でした。

そのうえで、調査では応募しても採用されなかった理由(高齢者自身が分析した理由)を尋ねています。

それによると、「人事責任者が高齢者雇用に消極的だった」(31.4%)が最も多く、「職場全体に高齢者雇用に消極的な雰囲気があった」(18.6%)、「自分の専門的な能力・スキルが評価されなかった」(14.0%)と続きます。

調査の中の自由記述でも、年齢や専門性のミスマッチを指摘する声は少なくありません。

「求人では『年齢制限なし』としながらも、実態は高齢という理由だけで、面接さえ受けられなかった」
「年齢で勤められる職種は限られていると思った。何十年もやってきた職種であるにもかかわらず年齢で頭からシャットアウトされ狭き門を実感した。定年後継続雇用はあるものの、一般の中途採用の枠に高齢者雇用はほとんどないのではないか」
「資格を有効に活かせる求人数が少ない。応募企業内に知人がいないとマイナスとなる場合が多いと感じた。面接では『会社内に保証人になってもらえるような人がいますか?』とよく聞かれた」
「技術は日進月歩であり、古い技術や経験は評価されないと思いました」
「もっと積極的に働ける場を提供してもらえれば、意欲のある人は認知予防にもなると思いました」