特に、一般の人々との間に心の繋がりをつくることが非常に得意だ。

「自分が何を考えているのか」「何をしているのか」を直接伝えるために、SNSへの動画投稿を積極的に活用している。

ロンドン市長時代、外相時代、そして現在も、変わることなく動画を常にアップする。

動画では単純に原稿を読むのではなく、自分の言葉で直接訴えかける。私はジョンソンの報道官として数多くの動画を確認してきたが、実に多くの人々がそれらの動画を視聴していた。

ボリス・ジョンソンという政治家は、アメリカのトランプ大統領と比較されることが多い。

たしかに2人ともブロンドヘアーで、人々と直接的にコミュニケーションを取りたがる。そして、人の心を捉える才能も共通している。両者とも、まさに本物の政治家だと言えるだろう。

ただし「何を伝えているか」という点においては、両者には違いがある。私がジョンソンの下で働いていたときトランプ大統領は、戦争や、イスラム教徒の入国制限、イランの核問題など積極的に発言していた。

またトランプ大統領は、政府の中枢メンバーに伝える前にツイッターで発表してしまうようなこともあるが、ジョンソンは決してそういうことはしない。トランプ大統領と比べると、重要な意思決定に際しては様々な人物の助言に耳を傾けて相談し、すべて取り入れたうえで慎重に決定する。

トランプ大統領は株価動向を常に気にしているという話もあるが、少なくとも私が仕えた外相時代、ジョンソンが常に注意を払っている個別の指標はなかった。

もちろん現在は首相という立場もあるので、国民の世論調査の状況などは、1日10回くらいは見ているのではないかと思う。政治家というのはどこでも同じだろう。

ブレグジット日本への影響はポジティブ要素も

最後にボリス・ジョンソンの日本と中国に対する考え方について触れよう。まず、17年に彼が来日した際に、明確に発言した内容を紹介したい。

イギリスにとって日本は、極東地域における安全保障上の関係が最も近しい国であるということだ。

中国に関しては、特に南シナ海の活動に関して懸念があるとも主張した。これは中国に対するイギリスの一般的な視点から見たスタンスとも一致する。

貿易通商問題に関しては、日本と中国は両方とも重要な存在だ。外交関係としては、さらに生産的でポジティブな関係を今後も継続していくことになる。ただし、イギリスが中国に対して安全保障上の懸念を持っていることは確かである。