ブレグジットを推し進めたり、時に荒々しい暴言を吐き、失言を繰り返すなど、型破りな政治家のイメージがあるボリス・ジョンソン。彼は、一体どういう男なのか。

ジョンソンはウィンストン・チャーチルを尊敬しているかと問われることがある。日本でも、彼がチャーチルのことを記した書籍が出版されていると聞いた(『チャーチル・ファクター』)。

ジョンソンもチャーチルも、非常にきめ細やかな思考をするタイプの人間だ。

ジョンソンは演説能力が非常に高く、様々なスピーチ原稿をすべて自分で書き、誰かの書いた原稿を好まない。チャーチルもそのような人物だったのではないかと思う。

これは私の推測であるが、ジョンソンがブレグジットに臨む姿勢を見ると、チャーチルの置かれていた立場と自らを重ね合わせているはずだ。1930年代を振り返ると、チャーチルは「ドイツからの軍事攻撃に備えてイギリスの軍事力を強化するべきだ」と主張した数少ない政治家の1人だった。

それは現在のブレグジットを巡る状況と似ている。当時もエスタブリッシュメントの人々の中でチャーチルの主張は不人気であり、政治的にすっかり孤立している状況だった。過去の決断においては、チャーチルが正しかった。

現在のジョンソンの決断が正しいかどうかは、これからわかることになるだろう。

ジョンソンとトランプ、2人の共通点とは

ジョンソンはとにかくピュアな人間だ。相手のことを考えながらも、人間同士の繋がりを生み出していく才能がある。イベントなどに参加する場合は積極的に楽しむ。

2015年の来日時、ラグビーレセプションで子どもたちとプレーした際にも、子どもたちに思いっきりタックルしてしまう一幕があった。子どもは直ぐに起き上がってケガはしてなかったと思うが……(笑)。

また、17年に早稲田大学でロボットを視察した際にも、通常の外相がやらないような、身振り手振りの派手なパフォーマンスをしてみせた。その場にいた人々にも強烈な印象を残した。

思えば、彼が市長時代にロンドン・オリンピックが開催されたのだが、本人がパラシュートで降りてくるという、驚きのパフォーマンスを披露していた。

彼はコミュニケーターとしても非常に優れた能力を持っている。

ロンドン市長を2期8年務めたが、驚くことに保守党の党員だった。普通、ロンドンは労働党の地盤が強い地域なのだが、ジョンソンはそれでも選挙で勝利した。他者の関心を引いたり、うまく伝えたりすることに、彼は天性の才覚を持っている。