まず監督官庁は、国家の強制力が期待できる一方で、「不祥事に関する相当な資料を用意しないと取り合ってもらえないことも多い」(浅見氏)。
マスコミは、その不祥事が重大犯罪、あるいは有名企業によるものなど、「ニュース性」があれば、絶大な「効果」が期待できる一方、ニュース性がなければ、動かない。
内部通報窓口など、社内に告発する場合、監督官庁やマスコミなど外部へ通報するのに比べれば敷居は低い一方、告発がもみ消される、あるいは匿名性が守られず、会社から報復される心配がつきまとう。
以上3つから内部通報窓口を選ばせるには、その長所を伸ばし、短所をなくすことが重要だ。まずは「敷居が低い」という長所を伸ばす。「『公益通報窓口』を設置し、その存在を、派遣社員を含め、すべての従業員に広報することが大切」(浅見氏)。せっかく窓口を設置しても、それが社員に知られていなかったり、あるいは内部告発予備軍として肝心な新入社員、派遣社員にまでは知られていないというケースは多い。
浅見弁護士は「窓口の“顔”を見せる」ことも、効果的な広報になると語る。社内報やポスターなどで、窓口担当者の顔写真やプロフィルなどを載せることで、敷居が低くなるのだ。ただし、窓口を設置後、時が経つにつれて熱が冷めて、窓口の存在が形骸化することも多い。広報は継続的に行わなければならない。
匿名性を保つには、窓口には外部の弁護士資格者など、法令上の守秘義務が課された人を置き、告発案件には誠実に対応する。そこまでしてはじめて、告発者は社内窓口に向かって安心して義憤を声にできるようになるのだ。