たとえば財団の評議員をお願いしている京都造形芸術大学教授の竹村真一さんは、デジタル地球儀「触れる地球」で知られ、本書の著者ハラリと同じように地球の歴史を俯瞰し、137億年前の宇宙の誕生から電子顕微鏡レベルの話にまで自由に行き来する方です。

身のまわりしか見ていないと、自分が今、歴史上のどこに立っているのかわかりません。今の時代を知るにも未来について考えるにも、人類誕生まで遡って初めて見えてくることがあるのです。

GDPと幸福度に相関なし

今の世界は各国が経済的繁栄を求めて競っていますが、GDPと国民の幸福度には相関性がないというのが、専門家の一致した見解です。つまり世界は人々が幸せになるためとは異なる、間違った目標を追い求めているのです。

では現在のものに代わる新しい社会システムを、どうやってつくっていくのか。目標にすべきは人々の幸せです。そこで18年に幸福に関する学術研究の助成や普及を目指す「LIFULL財団」を設立し、また「幸せは大事だ」という考えを人々に共有してもらうために、「PEACE DAY財団」も立ち上げました。

LIFULLの経営理念も「常に革進することで、より多くの人々が心からの『安心』と『喜び』を得られる社会の仕組みを創る」としています。

今の社会システムでは、世界人口が100億人になったら破綻してしまうでしょう。人類の叡智を集め、100億人が200億人であっても幸せに生きられる社会を実現しなければなりません。

▼自らの原点を深く認識する哲学書
「論語」と「算盤」を高い次元で両立させることが経営です

起業したてのころに読んだ本

初めて稲盛和夫さんの著書を読んだのは26歳、私がサラリーマンを辞めて起業したばかりのときでした。それが『成功への情熱』(PHP文庫)です。

稲盛和夫氏(左)と渋沢栄一。(右:毎日新聞社/AFLO、=写真)

稲盛さんは誰にでもわかりやすい、語りかけるような言葉と文章で、「利他が大事だよ」「人間ってこういうもんだよ」と説いておられます。初めて読んだときは、まだ「利他」という言葉もあまり知られておらず、私も「利他って何だ?」から始まったのですが、今ではLIFULLの社是も「利他主義」としているほどです。

稲盛さんの著作の中で、初めての方にお勧めしたいのは利他などについてわかりやすく説いている『生き方』(サンマーク出版)です。私自身は『京セラフィロソフィ』(同)を日々持ち歩いています。