「今日のほっとけーき、まずいから、いらない」
もう一つは、ちょっと反省したできごと。完成したホットケーキは全部で4枚あるので、いつもホットケーキを「ぽたあん」「ぷつぷつ」「ぺたん」「ふくふく」というふうに焼いていくページを4回繰り返し読みます。
あるとき、もうそろそろお昼ごはんの時間にシンちゃんが、「大川先生、これ読んで」と『しろくまちゃんのほっとけーき』を持ってきました。時計を気にしつつ、「ええい、待たせるのもかわいそうだし、急いで読んじゃおう」と絵本を開いたのですが……。
いつもは4回繰り返すホットケーキを焼くシーンで、2回目を読もうとすると「もういい」と言うのです。
「あら? いつもは4回読むじゃない、どうしたの?」
そう聞くと、シンちゃんはつまらなさそうに、
「今日のほっとけーき、まずいから、いらない」
ですって!
きっと、私の気持ちが絵本に向いていないことに途中で気づいたのね。この話をよそですると、ホットケーキが「まずい」なんて巧みな表現ですね、とおどろかれます。
絵本は「自分の琴線に触れるもの」を選ぶのがいい
でもね、子どもってこれくらい敏感で、ものすごい感受性を持っているんですよ。
このエピソードを教訓にするとしたら……お子さんに絵本に興味を持ってほしければ、まずは読み手――お母さん自身が楽しみましょうってことね。
お母さんが「おもしろい」「かわいい」「いい話ね」とポジティブな気持ちで読んでいたら、子どもも目をキラキラさせ、身を乗り出して聞いてくれるはずです。
ということで私、どれだけすばらしいとされる絵本でも、気が進まないものや好きでないものは読みません。
『かいじゅうたちのいるところ』(モーリス・センダック/冨山房)のような世界的名作でも、なんとなく絵が好きではないという理由で手をつけないの。嫌々読んでも、それはきっと子どもたちに伝わってしまいますから。
絵本は、自分の琴線に触れるものを選ぶに限ります。
このことを大前提として、一つわかりやすい「本の選び方」アドバイスをするとしたら……。
保育士になって60年、たくさんの絵本を読んできましたが、やっぱり10年以上読み継がれている絵本は間違いなくおもしろいと思います(好みは抜きにしてね)。ロングセラーの絵本には、力がありますね。