相棒の妻と「ただならぬ関係」に陥った

「僕はどんな曲であっても、たとえ全体的に陽気な曲であったとしても、どこか悲観的な部分を織り込む癖があるんです」

例えば愛する人への思いを歌っていながらも

今思い出に変わってしまうかも
永遠に続くわけがないのだから

と言ってしまう。(『ディス・イズ・ザ・タイム』より)

そしてその悲観的な結末が実際に訪れたときの落ち込みようは、周囲が見ていられないほどひどいものになる。

21歳になり、ハードロックのデュオバンドを組んでいたころ、相棒の妻(後にビリーの妻となるエリザベス)とただならぬ関係に陥る。もっとも、彼女からは、結婚生活がすでに破綻していて離婚は秒読みと聞かされていたから、やましさを感じることなく交際しているつもりだった。

画像=『イノセントマン ビリージョエル100時間インタヴューズ』
後にビリーの妻となるエリザベス

二度目の自殺未遂の後に作った曲

ところが、何も知らない相棒は、二人の関係に気づき、ビリーを殴り倒す。ビリーにしてみれば、てっきり夫婦間で話はついているものと思い込んでいたから予想外の展開だった。相棒である親友を裏切ってしまったという良心の呵責に耐えられず、鎮静睡眠剤を飲んで自殺を図る。救急搬送されて一命はとりとめたが、依然として罪悪感、絶望感でいっぱいのビリーは家具の磨き剤を飲み干し、2度目の自殺未遂となった。

そのころの彼の心理状態が見事に綴られた曲が『トゥモロー・イズ・トゥデイ』だ。

眠りにつくことも怖い
だって明日も今日と同じなんだから
(略)
明日を考えても仕方ない
だって昨日と同じことの繰り返しなんだから
ああ、今、川に向かっている

ビリーが病院で過ごした時間は、人生の教訓を得ただけでなく、自分を憐れむマイナス思考から脱却するきっかけになったかに思えたが、これから出会う女性たちに一喜一憂し、翻弄され、立ち直れないほど落ち込むような日々が待ち受けていた。

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