「私も課長になりたい」と思う部下がいないワケ

それでも前出のJTBコミュニケーションデザインの調査で、令和の時代の課長としての意気込みを聞くと、30代の課長は「組織の長として部下を成長させたい」と答えた人が39.5%と2番目に多い。その意気込みはよいとしても年上の部下を育成するのは容易ではない。

ある大手通信会社では「部下育成を積極的にやりたい」と手を上げた30人の精鋭の課長を対象に3日間の「年上部下を活性化するための研修」を実施した。

研修では誰もが張り切って指導のノウハウを学んだが、その結果はどうだったのか。同社の人事担当者はこう語る。

「研修では上司としてのマインドチェンジやノウハウをたたき込みました。研修からしばらくして課長全員に個別に面談をしましたが、うまくやっていたのは残念ながら一人だけでした。それはなぜか。要するに忙しいからです。マインドチェンジをやり、ノウハウをいくら身につけても忙しくてやれない。解決すべきはノウハウなどではなく部下を指導するヒマを作るしかないのです。今の課長には、今日はちょっとヒマだからあいつの面倒を見てやるかという余裕もないのです」

結局、研修は無意味だという結論に達したという。

写真=iStock.com/OkinawaPottery
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部下の育成は課長の能力によるかもしれないが、それ以上に日本の会社が部下を育成する時間すら奪っているのが現状だろう。

部下にしても、自分の面倒を十分に見てくれないばかりか、自分の仕事に走り回り、夜遅くまで仕事をして疲れている課長を見ていて「私も課長になりたい」と思うだろうか。

「管理職になりたい」インド86%、韓国60%、日本21%

パーソル総合研究所の「働く意識」の国際比較(アジア太平洋エリアの14カ国・地域)調査(2019年8月27日)によると、「管理職になりたい」という日本人の非管理者の割合は21.4%で最下位だった。

1位のインドは86.2%、13位のニュージーランドでさえ41.2%。日本人はその半分という異常な低さである。

管理職になりたくないというのは、部下の問題というより、その根源は「課長の働き方」にある。事業の中核を担う課長が疲れて、病んでいけば、いずれ経営そのものを弱体化させる。いや、すでに日本企業はそういう状態に陥っているのかもしれない。

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